昨日、標記の研修を実施した。
尋問における異議に特化した研修を依頼されたのは三度目だが、過去2回は実演を併用した。やってみれば分かるのだが、異議には出し慣れることが必要だからである。
しかし今回は、3時間(!)みっちり座学研修という御注文を頂き、過去の自身の異議事例を豊富に持参して尋問調書を解説するのに時間を割く趣向で研修を実施した。
当初の腹づもりでは座学1時間、調書解説2時間の配分を予定していたが、案外、座学だけで100分を消費してしまい(規則199の10~12を省略して100分かかったのは流石に改善を要するように思う)、尋問調書の解説がやや手薄になったのは心残りである。
さて、尋問における異議は、やはりケースセオリーと関連付けて考えるのが現代的だろう。整理手続において完成させたケースセオリーを妨害してくる不意打ち的な主尋問を証言予定開示義務等の理論を駆使して制限する、整理手続において完成させたケースセオリーに基づく反対尋問に対し、強引な誘導で回復を図る再主尋問を阻止する(再主尋問は主尋問と同様に誘導が禁止だが、そのことを理解していない裁判体に遭遇することは、経験的にさほど珍しくもない)、思いつきのように「もう一問」と「再々主尋問」を要求してくることに対し刑訴規則違反を指摘して咎める・・・全てはケースセオリーの完結の手段として計算尽く、且つ、根拠法令を理解して場面場面に適切な異議事由を選定し、当意即妙に簡潔な陳述を行うことは、7割方、尋問前に準備できるし、そうしなければならない。
現状、そのような実践的な実務書は皆無(大阪弁護士会の異議マニュアルや、高野・河津の法廷弁護技術は、おそらくはそのような視点で編まれてはいるが、いかんせん、記述の分量に乏しいし、実際の尋問調書が紹介されているわけでもないという欠点がある)なので、こういう研修を3時間、みっちりとやるのは、準備する方にも、受講する方にも、価値があったと思う。
検察側の強引な回復尋問と同じくらい、疎んじられているのが、裁判所による補充尋問である。私が今回、持ち込んだ尋問調書でも、(毅然として回復尋問を制限している見事な訴訟指揮がある一方で、)裁判官自ら検察官の代わりに強引な回復尋問を行おうとしたり、それに異議を出されるや、検察官の再々主尋問を許可したりと、どうしようもない訴訟指揮が行われ、それに対し私が「中立公正であるべき裁判所にあるまじき」と異議を出している場面が複数、収録されている。
裁判所だからといって、法令に反した尋問が許されるわけではない。原則的には、主尋問と同じ規制が働くべきだと考えるが(例えば誘導尋問を例に取ると、補充尋問に原則誘導を許すべき理由は全くない)、いずれにせよ、補充尋問に対しても、法令に基づく理論的な根拠を挙げて、完全と異議を出す、そうでなければ弁護人は務まらない。そういった話をし、自身の現在地を確認する上でも貴重な研修となった。
最後に、受講者から「異議に対する裁判所の訴訟指揮(裁判)に対し思うところは」という趣旨の質問を頂いた。
それへの回答は、「裁判の結論を出すこと」「理由を付すること」である。
尋問における異議は、手続経過や、開示証拠も踏まえて周到な議論が闘わされるので、裁判所は最も情報不足の立場に置かれている。情報不足を自覚し、当事者から誤解を糺す機会を確保する上でも、「こうだから誘導ではないと思う」とか「こういうことで伝聞と判断する」と、完結にでも判断理由を添えるべきだと思う。そうすれば、「それは誤解だから」と、改めて異議を出す機会にも恵まれようものである。手を替え品を替えで異議を出し、裁判所が判断を訂正することは一再ならず経験するところであり、手続的に適正な訴訟運営のためには、裁判所もまた意識改革が必要だろう。
(弁護士 金岡)

















