愛知刑事弁護塾では、年数回、外部講師を招聘して勉強会を行っている。
本年は、既に4月に刑事施設の諸問題に通暁した研究者をお招きしたが、今回は刑法の専門家をお招きして、久々に実体法(刑法)について学習機会を得た。

実務家目線で乱暴に要約すれば、詐欺罪等は、特に暴力団事犯や特殊詐欺案件を逮捕、処罰するために、結論先にありきで運用されている。研究者に期待するのは、理論的な破綻を的確に指摘し、若しくは少なくとも、可能な限り濫用を抑制するための歯止めとなる理論的説明を提示することである。

そのような期待で研修に臨み、搭乗券不正取得事件や暴力団員による口座開設事件などの最高裁判例、更にはまだ最高裁判断は得られておらず下級審の判断は分かれている、暴力団員による家族名義ETCクレジットカードの使用案件等を的確に整理頂いたが、やはり、処罰の根拠として前面に押し出されているのが例えば「経営上の重要性」であるのに(搭乗券不正取得事件)、それを財産犯で処理しようという所に無理があること、弁護人は決して物わかり良くなるべきではなく、財産犯である詐欺罪等からみておかしなことをやっているということを、きちんと問題提起しなければならないとの思いを強くした。
講師によれば、詐欺罪を社会的法益に対する罪であるかに位置付けようと画策する勢力すら、存在するとのことであり、事態は容易ならざる所に来ている。

私自身、最高裁で結論の分かれた、いわゆるゴルフ場詐欺事件の弁護を担当していたので、この分野はそれなりに研究しているつもりではあるが、的を射た弁護活動を行う上でも、このような理論的裏付けを確認し、本質的な部分を抉り出す努力が必要である。

当塾が、最先端の研究者に足を運んで頂ける場であると言うことは、一つの成果の結実したところであり、今後も、このような取り組みを続けていきたい。

(弁護士 金岡)