前回の検討では、同一の事務所の同僚弁護士が分担で受任する場合、形式的には被疑者ABの同意承諾を得ることで、職務基本規程28条違反ひいては57条違反を免れるものの、最善弁護義務や、57条が守ろうとしている依頼者からの信頼感~信頼感が欠如していると弁護の質は低下すること不可避である~の観点から、基本的に望ましいものではないという結論に至る。
他方で、(一人で)一括受任にせよ(事務所で)分担受任にせよ、情報共有を密にし、一致団結した方針で対峙出来るという利点があることも、検討しておく必要がある。
共犯者がバラバラに弁護人を選任し、弁護人同士の意思疎通を欠くと、重要な情報が共有されなかったり(ということは一部の共犯者が、前提を誤認して、不本意にも誤った方針に突き進んでしまう~最悪の場合はその誤った決断が事件の様相を致命的に捻じ曲げてしまうことも生じる~危険を抱えることになる)、ひどい場合には「切り違え尋問」の餌食となる(一括受任の場合で考えると、Aは全部認めているぞとBに吹き込んで黙秘を断念させようとしても、Bが同じ弁護人に聞けば立ち所に解消しようものであるから、そもそもそのような事態にはさほど至らないだろう)危険もある。
前掲後藤論文は、労働公安事件や会社が一丸となって組織的に事件対応するような場合を挙げて「個々バラバラな弁護をしていては、有効に防御できない」とされており、時代を感じさせる例証ではあるものの(なにしろ2000年の論文であり、私が弁護士になる以前である・・なお、同論文では被疑者段階の一括受任問題は公判段階と性質を異にする側面があり別途論じたいと結ばれていたが、本稿執筆に先立ち御本人に取材したところ「続編」の執筆は未了とのことであった)、その指摘は正しい。
現代的により広く、前記のような情報共有や切り違え尋問対策としても、より主体的に防御する必然性から、あらゆる事件で一枚岩の弁護体制を敷くことの重要性は更に認識されているのではないかと思う。
私の場合は、(そもそも個人事務所なので)一枚岩の弁護体制を敷くべきと判断した場合は、共犯者にも、有能かつ協調可能な弁護人を紹介して、緩やかな連携体制を構築することを目指すことが基本になる。最終的には個々の弁護人が、その最善弁護義務に賭けて、依頼者の自己決定を引き出すことになるのは勿論であるが、このようにして一枚岩の弁護体制を構築し、打ち出された方向性は、概して、その時点では最善手であるものである。
となると、その一枚岩の弁護体制を、同一の事務所で分担受任することで実現しても良さそうなものではある。「紹介されて共同歩調可能な弁護士」と「同僚弁護士」とで、本件でいえばBの立場から寄せうる信頼感にそこまでの差があるのか、という声も聞こえてきそうである。
この点は価値観の相違もあり解決困難であるが、「結局、他所は他所、うちはうちだから」と、最終的な自立性が担保されていることを依頼者に説明出来るかどうかが大きいとみれば、一枚岩の弁護体制と、信頼感確保とを両立させる上で、外部発注の方が勝る、というところだろうか。
従って、結論的には、同一事務所における分担受任はやはり望ましくはないものの、一枚岩の弁護体制を敷く必然性があり、そのことの利点が、有り得る依頼者の不信感ひいては有効な弁護活動を阻害する可能性より勝ると判断され、且つ、そのような意味での(抽象的に最善弁護義務が阻害されるかもしれないというものではなく)比較考量について依頼者の同意承諾が得られるなら、分担受任は正当化される、という帰結に至る。
このような帰結であるから、上記のような検討を経ず、例えば専ら経済的動機から分担受任するような場合は、正当化されず違法の疑いが濃い。
ところで前回紹介にかかる検察官からの申入れは、公益的に、つまり被疑者Bのことを心配して申し入れられたものである、とは露ほども思われない。Bの黙秘を断念させるために、揺さぶりをかけてきているだけであろう(このような付け入る隙を生まないためにも外部発注が勝ろうか)。
平素、捜査の秘密を強調する御仁が、黙秘断念工作のためならば供述状況にすら言及する御都合主義には笑うしか無いし、Aの言いなりにBを黙秘させていると決めつけられている甲弁護士、そのような甲弁護士の言いなりにBを黙秘させていると決めつけられている乙弁護士からすれば、心外な侮辱であって訴えても良いくらいである。
ともあれ、既に検討した然るべき手順を踏んでさえいれば、このような弁護妨害工作は毅然として撥ね除ければ良いし、その場合、依頼者にも~手順さえ踏んであれば~「受任時に説明してあるとおり」と、直ちに納得を得ることが出来るだろうから、万事、良しである。本質的に、検察の目を気にする問題ではない。
(2/2・完)

















