本欄本年8月6日、「検察官、弁護人に辞任を申し入れる」という記事を掲載した。
論旨は、同一事務所で共犯者(被疑者段階)を共同受任したことに対し、検察官から利益相反等として辞任を求められた事態を、弁護士倫理上あるいは憲法上の弁護人選任権保障の観点からどのように扱われるべきかを論じつつ、共同受任する必然性は、従前、言われているよりは、やや広く捉えられるべきであり、最善弁護義務違反や、少なくともそれに起因する不安感という要素との相対評価において、然るべき判断を行えば是とされる場合もある、という結論である(勿論、消極要素が表面化した場合の辞任等、従来からの議論は当然に踏まえられる必要がある)。

で、今回、件名にあるとおり、同じ名古屋地検公安部、鈴木舞検察官名義で、今度は同一弁護人が共犯者から一括受任した事案で、辞任を求められる事態があったと情報提供を受けたので、またも、取り上げるものである。

提供された情報によれば、検察官は、両被疑者に上下関係があることを指摘し、「いずれも否認しており、示し合わせたかのようにいずれも被害者の作り話である旨述べている」、また、上位の被疑者において被疑者ノートを持ち込ませるよう求め、これを拒否されると、「棒読みで文章を読み上げるように供述するに至っている」と指摘し、露骨に、弁護人を介した口裏合わせを疑っているようである。
もし弁護人に思い当たるところがないのであれば、誹謗中傷に加え、同検察官は、真実だから両名の主張が一致している(のかもしれない)のに、それを口裏合わせと決めつけ、要するに聞く耳を持たない姿勢に徹していることになる。過去の冤罪の歴史に鑑みれば、このような検察官の、自分の信奉する真実以外は取り合わない姿勢は冤罪の原因となり得るものであり、検察の心得にも反する。弁護人としては毅然と抗議すべきであろう。

また、前回記事でも指摘しているように、捜査段階では証拠開示がないため、本当に上位者が棒読みで文章を読み上げているようなのかどうかは、確認のしようもないが、これが悪質な揺さぶりである可能性に照らすと、そのような虚偽を交える検察官の取調べに付き合う理由は一つもないことになろう。

昨今、急速に「出房拒否」が支持を得て広がりを見せており、黙秘する以前に、取り調べに応じる理由があるのかが真剣に問われているが、それも宜なるかなであり、密室を利用して、あらぬ言いがかりを付けられる可能性がある以上、そのような場に、軽々に大切な依頼者を送り出す方が間違いである。
本件弁護人に本題以外で敢えて指摘するとするならば、「棒読み」云々と、依頼者を安易に取調室に送り込んでいることへの反省と対策であろう。

(弁護士 金岡)