大阪府、上告を断念する

本欄で経過を報告してきた、大阪府警の捜査員によるオートロック突破事件は、大阪府の上告断念により、住民側の勝訴が確定した。

入り口にオートロックセキュリティが設置され、コンシェルジュまで配置されている(本件の当初侵入時点ではまだ出勤時刻ではなかったが、土橋、齋藤の両名は、途中の段階で既に出勤していたコンシェルジュの前を平然と往復し、侵入を繰り返した)マンションにおいて、いわゆる「共連れ」等の方法を駆使して突破、更に居住階の玄関にまで迫る行為は、ストーカーや反自衛隊ビラ配りなら間違いなく、逮捕案件である。それを警察が行うのは許されるのかという純粋な憤り(小学生のお子さんに「声かけ」して原告を呼び出そうとしたため、お子さんがおびえたことも大きかっただろう)から提訴に至り、裁判所の理解を得て、勝訴確定に漕ぎ着けたことは何よりであった。

侵入の大部分を防犯カメラが捉えていたことは、やはり大きく、警察官につきものの偽証をかなり防げたことは指摘しなければならない。そのお陰で、法律論争に専念できた。

さて、研究者の意見書についてである。
意見書は(論文化するための所要の改定はされているようだが)以下から読める。
https://nanzan-u.repo.nii.ac.jp/records/2001954

この意見書を依頼するに当たっては、どの分野から研究者を選抜するか、という悩みがあった。オートロック突破の違法性を論じる適任は、刑法分野かもしれない。他方で、大阪府警が任意捜査として許容範囲と主張するならば、刑訴法分野だろう。オートロック内部の保護法益性を的確に捉えるには憲法的な議論が必要かもしれない。これらをつらつらと考えて、今回は、憲法学者に御願いした。上記意見書の執筆者である實原教授は、シーテック事件の原告側で意見書を書かれており、捜査に名を借りた違法な警察活動という括りで事件を評価する上で有効ではないかと考えられたからだ。

そのお陰かどうかは不明だが、当初は、「侵入から、玄関前に迫るまででは、居住部分により迫る玄関前の方が違法性が高まるのでは」という見解を示していた地裁が、最終的には、しっかりと、オートロック内部の保護法益論を展開した。
裁判所の反応も踏まえつつ、より適切な理解のために補充の主張立証を行うというのは、まさに訴訟手続の醍醐味と言えよう。

なお、本訴は、原告本人尋問を実施していない。
防犯カメラ(や原告のスマホデータ等)で事実認定の大枠は固まり、敢えて、原告本人尋問をしなければ立証できないような事情もなかったからだ。
この種の訴訟では、原告本人に思いの丈を語って貰うべく、尋問を求めるのが普通かもしれないし、そのような劇場型の立証活動が裁判所の心証形成に大きな影響を与えるのでは?と問われると、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
私は、訴訟記録上に、自分の必要とする事実関係が顕出できれば、それを情緒的、あるいは劇的に演出することに些かも関心がないので、そういう選択をした、ということになるが、二十数年、弁護士をやっていても、その辺は未知数である。

(弁護士 金岡)