先日、論告求刑の手前まで進んだ段階で交代で受任した案件がある。その段階で保釈に三度、失敗していたが、私の方で身元引受体制を調整し、その他の必要な準備も整え、前回失敗からものの3週間で無事に保釈許可に漕ぎ着けた。
幾つか紹介しておきたい話題もあるので、以下、取り上げることとする。

まずは検察側の対応の悪さ。
午前10時台に申し立てているのに、その日のうちに求意見が戻らない。
これは本当に問題である。つい数週間前にも反対意見を出しているのだし、後半の流れを熟知している公安立会検察官が即日意見を出せない理由はない。これを漫然と放置している裁判所にも問題がある(当然、抗議文を出している)。

2日目夕方、裁判官から電話があり、保釈条件について協議する。
「必要なことは書面に全て書く派」なのでこちらから面談を求めたりはしないが、裁判官が協議しようと思うくらいには書面を作り込んでいる自信はある。

3日目夕方、漸く許可決定が出る。金額は1000万円。特殊な条件として、毎週1回、弁護人事務所に出頭すること、及び、月1回の報告命令が発令された。
午後6時30分ころ、検察官が抗告(及び執行停止)を申し立てた。許可決定から約2時間が経過しており、つまり保釈保証金の納付からも2時間が経過している。この2時間の身体拘束は、裁判所の保釈命令を無視して行われているものであり、よくよく考えてみると何故、許されているのか説明が付かない。お迎えの手配もあるのに「2時間も」釈放を拒む実務は、今後、改めさせる必要があると思われた。

ともあれ、抗告されたからには抗告理由が必要である。
既に事務所を出ていたので裁判所にファクスを求めると二つ返事で送付された(担当書記官に戸惑いは見られず、その裁判体では、既にごく普通のことになっているのかもしれない)。
同時並行で行っていた岡崎支部の保釈では、何度言おうと頑なにファクス利用を拒否されたため(柴田拓真裁判官)、審理期間が10日以上にも及んでいる。
迅速な裁判より不合理な片意地を大事にする裁判官に遭遇するだけでこのざまである。

で、検察官抗告であるが、なんと、執行停止申立すら却下されたのは驚きだった。
原審裁判官(つまり許可した裁判官)の保釈理由は、当初許可決定に特段、書き込まれておらず、原審裁判官意見としても定型文であったため、ついぞ分からず仕舞いであるが、金額や、特殊条件などの最先端の実務を活用して念入りにしつらえたものであったため、抗告を心外に思われたのだろうか。
抗告など論外、という原審裁判官の姿勢に呼応するように、高裁の抗告棄却決定の最後が「論旨には理由がない」ではなく「論旨に理由がないことは明らか」と結ばれていたのは少し面白かった。

出だしこそ、検察官の対応の遅さ(と裁判所の無為無策)に憤慨したが、主張書面と裁判所の保釈条件が噛み合い、迅速なファクス送付に、執行停止却下のおまけも付き、なかなか味わい深い保釈案件であった。
と同時に、「検察官の不服申立が2時間後になるのは当たり前」「その間の保釈命令無視も当たり前」「執行停止が認容されるのも当たり前」という、間違った実務を糺していかなければならないという課題も、改めて明確になった。

(弁護士 金岡)