先日本欄で、消防署の弁護士会照会対応が宜しくないことを取り上げた。
その事件の判決があったので、折角なので取り上げておこうと思う。

事案は、隣家の火事の類焼被害である。
火事の原因は、隣家の家人がストーブの前にバスタオルを干したまま入浴していた、というもので(干し方や干した時間については被告側の主張に変遷がある)、よくありそうな事案である。
重過失が争点となり、先行研究(伊澤裁判官による「失火責任法の重過失の認定について」判タ1509号)を紐解くと、1970~80年代の寝落ちの裁判例が複数、紹介されていたのが参考になった。寝落ちしたら火事になりかねない状態を放置することを重過失と捉えた裁判例がある一方で、寝落ちは重過失ではないと擁護するズレた裁判例もあり、調べてみると面白いものである。

本件では、ストーブの前に干されたバスタオルから火災に至ったのであれば相当至近距離で干していたことになる(燃焼学などと大袈裟なことを言わずとも東京消防庁が公表している発火実験などが有用であった)ので、その前提で、重過失が認定されることは比較的容易な事案であったと言える。

判決は、「電気ストーブの熱によってバスタオルを乾かそうとしたことは容易に推認される。そして、可燃性の高いバスタオルを電気ストーブの至近距離に干したまま目を離せば、仮に干した時点でバスタオルが湿っていたとしても、比較的短時間のうちに乾いて発火することは容易に予見できたといえる。バスタオルを電気ストーブの至近距離に干したまま半身浴を行って目を離した被告の行為は、当時○歳(註:70代半ば)という被告の年齢を踏まえても、通常人に要求される注意義務を著しく欠いたというべきであり、重過失が認められる。」とした(名古屋地判2026年10月30日、石上興一裁判官)。

上記事実認定は、前記東京消防庁の実験以外は、ほぼ消防署の火災原因調査に負う。弁護士会照会対応がひどく、提訴前に手に入らなかったことは噴飯ものであり、消防署には猛省してほしいものだ。

津々浦々探せば、類似事案は幾らでもありそうなものであるが、前掲論文で、そのものズバリというものは掲載がなく、自身でも探せていない。
民事裁判例が全てデータベースに搭載される動きが実現すれば、容易に見付けられるのかもしれないが・・検索対象が何十倍にもなるとすれば、人力でどうにかなるものだろうか、とも思うところである。データベース化自体は歓迎すべきことだが、考える材料は現在でも十分に足りている。寧ろ、海のものとも山のものともつかぬ裁判例が力任せに請求されるようなことになりはしないかと心配になる。

(弁護士 金岡)