当欄で取り上げているとおり、GPS捜査の違法性を問う国賠に取り組み始めて一定時間が経過したが、その間、他の地域で係争案件が増えると共に、更に、GPS捜査を違法と断じる裁判例が相次いだ。
名古屋地裁平成27年12月24日
水戸地決平成28年1月22日
がそれである。これで、最初に適法と認める裁判例が出て以降、相次いで三件の違法と断じる裁判例が出たわけである。

名古屋地判は、①極めて容易に相当正確な位置情報が取得できる、②終期がない、③プライバシー保護が相当強く期待される位置情報が取得されるおそれがある、という三点に着目して、強制捜査と断じた。
水戸地決は、相当程度具体的に位置情報が取得でき、趣味嗜好や私生活上の行動性向まで把握し得ることに着目し、強制捜査と断じた。
相次ぐ三裁判例は、何れも、GPS捜査を強制捜査と断じ、任意捜査としての限界を問うまでもなく無令状捜査の違法を認定した。当然と言うべきであろう。

なお、国賠への取り組みを通じ、捜査機関にGPS端末を提供し位置情報検索サービスを提供した業者に問い合わせたところ、同業者は、端末を無断設置するなどとは知らされていなかったこと、無断設置すると知らされていれば契約に応じなかった(そのことは約款上も営業用パンフレット上も明確である)ことを明確に回答した。そうすると、捜査機関(私の案件では愛知県警本部)は、無断設置目的での契約は拒否されることを知りながら、拒否されないよう、それを秘匿して契約に臨んだことになる。これは歴とした詐欺罪である(暴力団員が身分を隠して私企業と契約に及ぶ事例が根こそぎ詐欺罪として摘発されているが、取り締まる側の警察も同じことをしている。笑えない事態である。)。
そこで、近時、当時の愛知県警本部長を詐欺事件の被疑者として刑事告発したところである。なにせ、当の警察組織が詐欺加害者であり、その成果に乗っかった公判立証を展開する検察庁も同類であろうから、容易に捜査が進展するとは思われないが、法が平等に適用されることを期待したいものである。

(弁護士 金岡)