この春に予定されている研修担当は、次のような感じである。
3月 捜査弁護(奈良)
5月 整理手続(多摩)
6月 整理手続(札幌)
6月 模擬接見(愛知)

つまるところ、捜査弁護と整理手続ということになる。
この2つは、この10年の刑事司法改革を象徴すると言って良い。捜査段階から弁護人が関わる機会が増え、きちんとした対応が出来るよう助力する(村木氏曰く「取り調べはリングの上にアマチュアのボクサーとプロのボクサーが上がって試合をするようなもの」)ことにより、決定的に不利な状況が作られないようにする。その上で整理手続により可能な限り広く証拠を集め検討し、検察側の筋書きに誤りがないかを検証する(勿論、誤った筋書きを立て直す機会をも与えてはならない)。
ごくごく当たり前のこれらは、しかし二昔前は、当たり前ではなかった。起訴されたときには圧倒的に劣勢に置かれ、有利なものは隠され、僥倖に恵まれ挽回しかかると主張をすり替えられ(これはまだ最近、平成20年ころのことであるが、夜7時台に不法侵入して悪さをした、という点を攻防し、そのとき侵入した人物は被告人と似ても似つかないとの反証に成功したところ、判決では夕方4時台に侵入して悪さをしたと考えられるというすさまじいすり替えを受けたことがある。また、平成24年ころだったか、A日が犯行日だというので手を尽くしてアリバイ立証をしたところ、犯行日をA日以外に変更されるということもあった。奇しくも、どちらの事件も同じ裁判長が担当であった(彼が定年を待たず退官されたことは、世のため人のためであったと心から思う)。)、強引に有罪に持ち込まれる「傾向」は、熱心に刑事弁護に携われば共感できようことである。

従って、捜査弁護と整理手続に習熟し、活用できるようになることは、いまや時代の要請であり、高度なことでも何でもない。
10年以上の弁護士は時代の変化に追いつくこと、10年未満の弁護士はなぜこのような改革がなされたか知ることが必要であり、意義のある研修となるようしたいものである。

(弁護士 金岡)