各紙報道によれば、昨年一年間の警察による被疑者調べは約135万件で、うち苦情が申し出られた件数は418件、うち不適切とされたのが33件で、「一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること」は0件であったということである。

常日頃、捜査弁護を担当している立場から言わせてもらえば、「こんなに少ないはずがない」。本当に苦情申出件数が400件ちょっとしかないことすら信じがたく(これが正しい数字なら、私の苦情申出案件だけで数%に届こうものだ)、「不適切」が全国総数で33件というのも信じがたい(よほど、警察官が嘘をついているか、厳しい「不適切」基準を用いているか、その両方か・・まぁ両方であるに違いない)。

「一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること」は0件であったというが、少なくとも昨年2件は、監督規則3条1項2号ニ「一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること」該当として苦情を申し出ている記憶がある。
うち1件は、黙秘しますと繰り返していたところ「目を見て言え!」と言われたというもので、良識的に考えて同号該当性は明らかだろうと考えていたのだが・・(それとも警察的には、真人間に立ち返らせるため裸で対峙することの一環だとでも言うのだろうか)。

数字を操作されているとは言わない。ただ、苦情申出と扱われなかった件数が陰に沢山あるのではないかと言うこと、警察官が嘘をついて認めない案件、厳しすぎる基準故に「不適切」扱いされない案件が圧倒的多数だろうと言うことは、自らの経験的に明らかである。「なんだ、殆ど適切なんだ」という誤った印象操作に帰結することが懸念される。

(弁護士 金岡)