共謀罪がまたも新設されようとしている。条約批准に不可欠だという話もどこへやら、対象罪名を絞り込むことで「<生命・生活・生存>を最大に尊重する人間主義」を標榜する某与党も賛同するのだとか。
法務大臣答弁の迷走に対し、野党も野党で、辞任だ辞任だと騒ぐので「またか」と醒めてしまわないかが寧ろ心配になる。迷走する法務大臣なら、象徴的存在として地位にとどまって頂く方がよほど、建設的だと思うのだが。

さて、くだんの法務省がQ&Aをもうけているのを見つけた。
http://www.moj.go.jp/houan1/houan_houan23.html
共謀罪について私より詳しい弁護士、法律家は沢山おられるだろうから、逐一批判を綴るまでもないが、法曹から見れば程度の低い「ごまかし」が多用されている。
例えば「対象犯罪が,死刑,無期又は長期4年以上の懲役又は禁錮に当たる重大な犯罪に限定されています」「殺人罪,強盗罪,監禁罪等」とあるが、「長期4年以上」だから詐欺も窃盗も含まれる、ということは書かない(詐欺や窃盗を入れるとかくも広範囲かという印象を与えるからだろう)。
また例えば「厳格な組織犯罪の要件」と文字の色を変えて強調し、脚注までもうけて実際の運用が限定的であることを強調しているが、単発的な複数人の共謀による場合でも適用可能だと言うことは書かない。
実行される前に検挙し国民生活を守るのだと言うが、実行される前と言うことは本当のところが分からないと言うところでもあるから、とりあえず該当性があると「疎明」すれば裁判所は令状を出し、捜索、身体拘束に進むだろう(実務的に考えれば、「報復をおそれて匿名を条件に情報提供してきた誰々さんによれば」程度の警察の報告書でも、裁判所を動かすことは容易に可能と思う)。反政府デモや労働運動、それに例えば辺野古問題のような体をはった抵抗運動も、十分に射程に収まると言えるが、そんなことは一切、書かない。
よくもまあ、このような次元の低いQ&Aを作るものだと思うが、法曹でもなければ「なるほど悪いやつをより効率よく取り締まるためなんだな」で終わってしまいかねない。

及ばずながら、当事務所弁護士コラムでも声を上げてみた次第である。

(弁護士 金岡)