報道によれば、与党が維新の党と共謀罪で修正合意する見込みとなり、その合意内容の中に、付則としてGPS捜査の活用が盛り込まれる方針とのことのようだ。とんでもない事態である。

GPS捜査は、つい先日、最高裁大法廷判決により、かなり踏み込んだ内容で違憲と断じられたばかりである。
活用を言う前に、反省のための総括を行うことが先決である。
なにしろ警察は、捜査にGPS捜査の痕跡を残さず、保秘を徹底する内部指針を貫き、徹底的に秘密捜査に徹してきたのである。つまり違憲の私的領域への侵入を、徹底的に秘密にし、続けてきた。国民を欺き、被疑者被告人を欺き、弁護人を欺き、裁判所を欺き、ついでにGPS端末業者を欺いていた(業者においては、無断で位置情報を追跡することに用いないよう約款を設けていた。私の担当していた事案を含め、数多いる警察官もしくは警察組織は、平然と、無断で位置情報を追跡することに用いることを隠して、業者から端末・便益を詐取していたのである。同じことをヤクザがやれば詐欺でお縄になる。しかし警察に限っては、お縄にする側が詐欺師なのだから、お縄になどなりようがない。)。
このようにみれば、ことGPS捜査に関する限り、警察は、組織ぐるみで詐欺を敢行し、刑事裁判をねじ曲げ、憲法を遵守せず、それが露見しないよう秘密に徹するという、極めて悪質な犯罪者集団であったと言わなければならないことになる。なお、当然だが、「判例も分かれていた。悪気はなかった。」では通らない。法の不知を許さないのは、法治国家の出発点である。

このように極めて悪質な犯罪者集団たる警察に、強大な捜査権を任せるにあたっては、まずは今回のような事態を生じさせたことを反省する総括を求めなければならないことは当然だろう。反省する総括がなければ、また同じことをするに違いないからである(たくさんの被疑者が、取り調べで警察官から、同じようなことを言われているだろう)。
反省する総括を行うどころか、またもGPS捜査権を委ねようなどと言うのは、言葉を選んで慎重に表現するとしても、狂気の沙汰である。ねじが外れているどころか、脳みそごと、どこかに置き忘れてきたとでも言う方が相応しかろう。

現に権力が暴走し、それを阻止するのに、非力な一民間業者である弁護士数名が情報を集め合ってそれを暴くしかなかった(前記保秘条項も、各地の弁護士が個別の訴訟で少しずつ少しずつ、暴いていって、ようやくその存在が明るみに出たのである)。全く採算性のない公益活動である。
そんな現実があるのに、暴走を戒めるどころか、おとがめなしに再度、権力を行使させる。こんなことは絶対に許されない。

(弁護士 金岡)