本欄本年9月7日で例のごとく初動の重要性を強調したところだが、この事案では、他の弁護人から接見予定を融通して貰い、資料準備のための初回接見時間を確保することが出来たという内幕がある。

愛知県内の警察では、予め接見時間を予約しておく慣行がある。「何時から1時間くらい空いていますか?」「その時間は別の弁護士さんが」みたいな感じである。
誤解のないように言うと、これは、警察が予約を拒否できるという話ではなく、あくまで他の弁護士の接見と時間がかぶり待ち惚けにならないよう、調整機能が発揮されているという話である。予約しなければならないというわけでもないから、予約せずに行ったら会えないと言うことでもない。

利点は、なによりも、予定通り接見できると言うことに尽きる。これは依頼者にも重要な利点だと言える。
接見に行き、例えば接見室が一つしかなく、他の弁護士が待っているとなると「3人目」である。下手をすると、その日の接見を断念しなければならない。予め確実に接見できる時間を押さえておければ、予定通りに接見でき、そのような不幸な事態は避けられる。
他の都道府県では少数派の制度のようであるが(例えば、最近の感覚だと、奈良も三重も大阪も予約制はない)、混雑のために日延べという事態がかなり避けられるだけでも、依頼者の防御権にとって望ましい制度ではあろう。

弊害と言えるか、一つ目として、接見時間を知られる、というのはある。なんとなく嫌な感じはあるし、厳しい事件であれば情報統制を敷く利益もあろう。が、そういう事案では飛び込みで接見すれば良いだけだし、他の弁護士等の面会との衝突の危険を負担する上でなら格別の問題は生じない。

二つ目として、予約が殺到していると会いたいのに会えないと言うことがある。しかしこれも、予約制であろうとなかろうと部屋の奪り合いだから会えないと言うだけのことで予約制の問題ではない。それに、冒頭の弁護士さんのように、そういうことなら譲りましょうという連帯感を発揮すれば、予約の中に分け入り、無理をおして接見をすることも有り得る(冷たい言い方をすれば、早い者勝ちであり、後の予約者に譲らなければならないというものではない。あくまで礼譲の問題であろう。)。

三つ目として、接見時間は読めないものだという批判はある。しかし、読めるときもあるし、読めないなら多めに取ればよく、どうしても足りないなら前記の通り掛け合うことで、大過なくいける。
接見室の奪り合いという環境に根本的な問題があることは間違いないが、代用監獄問題も接見室が少ない問題も、一朝一夕では改善されないから、こういうところで弁護士業界が自助努力し、少しでも円滑に接見予定をこなし、防御権向上に努めると、そういう風にまとめれば、あって悪くない制度だというのが私の感覚である。

(弁護士 金岡)