この6~7月くらいからか、収容されていない事案(つまり在宅か保釈か)で、判決言い渡しの時に、「被告人の身体検査をするから10分くらい前に来て下さい」と言われるようになった。
判決言い渡しを受けた保釈中の被告人が刃傷沙汰に及んだ案件が発生したらしいことは報道で知っていたので、どうせその絡みだろうとは思ったが、幼子3名を連れて乳母車を押しつつ登場する被告人(0歳児が泣くので、配偶者の情状証言の時には被告人が被告人席で抱いてあやしていたような、ある意味でほほえましい案件)まで身体検査を求められたので、少々、違和感があった。

その背景に、裁判所内部で所持品検査に関し申し合わせた「事務連絡」があるということは、大阪の髙山巌弁護士から教えて頂いた。
曰く「被告人を含む事件関係者や傍聴人により危険物が法廷に持ち込まれることを未然に防ぐため、裁判員裁判事件に限らず、安全確保に関わる情報について、当事者等からの情報収集を一層密に行い、収集した情報をもとに、事案の内容や被告人を含む関係者の日頃の言動、関係者間の人的関係等に照らし、危険物の持ち込みの危険性を否定できない事案については、金属探知機を用いた所持品検査の実施等を積極的に検討して下さい(事案によっては、金属探知までは行わず、所持品検査のみを実施することも考えられます)。」という内容である。(複数あるが、引用したのは、本年6月16日付け訴ろ-15-Aという事務連絡)。

「否定できない事案」は「積極的に」やれと言われれば、ほぼ全件で実施されるだろうことは目に見えている。そして、その「否定できな」さは、事件を通じ形成されるだろう偏見や、判検交流が盛んな庁では検察からもたらされる口コミなどで心証形成されるのだろう。

私の担当案件は、記憶にある範囲で、1件は職業的な窃盗犯と検察が主張していた案件で、被告人は若年で粗暴的な傾向はなかった(薬物前科がある)。もう1件は、薬物事犯であるが、薬物の影響で配偶者に手をあげたりしていた、という事情はある。
が、どちらも事情と言えばこの程度で、なんでもかんでも突っかかったり息巻いたりする手合いではなく、(身柄事件ではないので当たり前だが)弁護人の横におとなしく座って裁判を遂行していた依頼者である。
理論上、抽象的に、危険物持ち込みの可能性がゼロかと言われれば、そんなことはあり得ないので、「否定できない事案」に分類されたのだろうが、行き過ぎというか、偏見の産物なのか、思考停止の事なかれ主義が発揮されているのか・・。

弁護人としては、依頼者への不当な偏見は打ち払う努力が必要だろう。
弁護人も隣に座るのが怖い、と言うような事案は別にして(そんな事案は滅多となかろう)、もし身体検査要望がされた場合は、前記事務連絡を踏まえ、「どういう根拠から、持ち込みが否定できない事案と判断されたのでしょうか?」と糺していく努力が求められるものと思われた(折から、今日、1件、要望案件が出たので、早速実践してみたいと思う)。

(弁護士 金岡)