随分と長期連載になった。

「その4」で弁護側の準抗告が一部認容されたことまで述べた。
検察官はこれに対し、直ちに、鑑定留置期間延長請求を行い、名古屋簡裁はこれを却下したところ、検察官は準抗告した。

弁護人は、名古屋簡裁の却下を、準抗告審から報告され、はじめて知った。
確かに、勾留請求だの鑑定請求だのについて、いちいち弁護人に求意見をするという制度にはなっていないし、直前に「あと2日」という決定が出ている中で出された延長請求など土台、無理筋なのだから敢えて弁護人に告げずとも判断できると裁判所が考えた可能性は高いが、それにしても、全く蚊帳の外に置かれたことは気分のよいものではない。手続保障というのはそういうものではない、ということを、裁判所にもおわかり頂きたいと切に思う。

ともかく、検察官が準抗告に及んだと言うことは報告を受けたから、申立理由を知りたいので申立書が欲しいと要望したが、渡せないと対応された(名古屋地裁刑事3部)。確かに渡す制度にはなっていないが・・(以下略)。
仕方がないから言える範囲で意見書は出しておいたところ、21日目、棄却決定が出た。いわく、(主位的な理由は、)鑑定留置期間の延長請求は職権発動を求めるものだから、却下決定は職権不発動の意味であり、これに対する準抗告はそもそも不適法というものである(名古屋地決平成29年12月21日、吉井隆平裁判長、引馬満理子裁判官、堀田康介裁判官)。
職権不発動の趣旨であっても却下決定の体裁を取った以上は不服申立の対象となるという見解も有力であり、判断を受ける側としては、ここだけは検察官に同情したい。とはいえ、当初準抗告で完敗しておきながら無理筋の延長請求を出すというところでそもそも、潔くないと言うこともまた、言っておくべきだろう。「その2」の堺支部決定も、似たような経過を辿ったところがあるが、判例時報の解説曰く、「(準抗告審裁判所が鑑定留置期間を変更したのだから)特に事情変更があったとも思われないのに、検察官が同決定の直後に再度の延長請求を行ったこと自体の当否も問われるように思われる」と指摘しているところである。

これで落着かと思いきや、検察官は更に翌日、鑑定留置請求を出し、名古屋地裁が却下すると(これもあとから聞いた)即日、準抗告に及んだ。ここまでくると、何を考えているのやら、呆れ果てる。
準抗告審決定(名古屋地決平成29年12月23日、合議体構成員は21日付けと同じ)は、認めた3週間の間に鑑定医の所見が示されるなど本格的な鑑定が必要だと言えるだけの事情も窺われないとして、三度、検察官の主張を排斥した。

得がたい経験であり、少しく考察研究した成果も共有すべく、少々長めに取り上げた次第である。

(その5・完)

(弁護士 金岡)