11日に亘り連載を続けた。
刑事弁護委員と常議員を除くと、愛知県弁護士会内でも知らない人の方が多いだろうこの問題は、しかし、より広く知られるべきだろう。
「第一部」を終えるにあたり、幾つか、書き留めておきたい。

【良かったこと】

膨大な時間を費やし、相当の労苦を費やしたが、良いこともあった、と振り返ることが可能である。
刑事弁護の精神、技術について前向きな議論をあちこちで行い、面識のなかった刑事弁護志向のある先生方と対話できたことは、今後に必ず役立つだろう。

また、いらざることに巻き込まれたとはいえ、処置規程の不備、弁護士会の人的資源の問題が随所で浮き彫りになったことも、今後に良かったと捉えたい(一例目が、まさしくほめられたものではない弁護活動の事案だったとすれば、このような問題点を浮き彫りに出来ず終わっただろう)。

そして少なくとも、今回のような場合に、反対尋問権を守るために効果的な弁護方針を立案し、これを実践できるかどうかについて、足手まといとなる弁護士と一緒に事件をやらないで済む。足並みの乱れは被疑者被告人の不利益である。「組むべき弁護人」を選別できる良い機会であった。

【刑事弁護委員会】

刑事弁護委員会は、刑事弁護の精神を謳い、裁判所に勧告意見を付さざるを得ないと理事者を追い詰められる意見を表明できるよう、それこそ(舟橋直昭委員長一押しの)「粘り強さ」を発揮し、意見書作成を議論すればよかったものを、ここを放り出したがために、一読して矛盾だらけの~つまり有罪判決を無理矢理無罪判決に変え、大筋では有罪と述べながら唐突に無罪となっているかの出来の悪い代物の~意見書になり、それを歴史に残すことになった。
表面上を捉える限り、刑弁の総意は、この出来の悪い代物を是認したことになる。それは、当事者としてはとても耐えがたい。

また、今回のことをどこまで反省し、今後に活かせるのだろうか。
現在、刑事弁護委員会内に検討会を設置し、既に3回を数えたようであるが、このこととて、今回の事態に不満をもつ一般委員の突き上げなくしては、始まらなかった。
まだ私が委員であった当時の事情を披露すると、私や私の代理人らが、刑事弁護委員会の勧告意見部分が否定されたことについて、事態を究明していくべきだと提言したのに対し、舟橋直昭委員長や、調査部会員の少なくとも1名が真っ向から反対した。
袂を分かち、刑事弁護委員会を離れた私が言うべきことかは分からないが、委員会の中心を担うべき人材を考え直さない限り、未来はないのでは?と思う。

現に、複数名が、機を見て委員会を辞める、と述べておられる。人材流出は実に勿体ないのだが、その原因を直視した方が良い。また、昨年本欄で宣伝した「準抗告事例99」のような腰を据えた研究活動も、結局は人材なしには出来ないので、そういった意味でも、古巣がどこまで解体的な出直しをはかれるものなのか、気にはかけたいと思う。

【積み残しの報告事項】

実はここまでの連載でも積み残しになっている報告事項が幾つかある。
それらについては、検討会の動向その他、折を見て再開したい。

(弁護士 金岡)