まずは実父部分を除外した準抗告の認容決定を引用。
「一件記録に照らし、また、準抗告申立書添付の資料からうかがわれる被疑者とその父との交流状況や、父との交流がなお若年といえる被疑者に与える肯定的な影響にかんがみ、被疑者の父については本件接見等禁止決定の対象から除くのを相当と認める」

なんの変哲もない認容決定である。
が、実はこの事案、先日ぼやいた常習的窃盗事犯として既に5度に亘り逮捕勾留が繰り返されている事案の続きであり、現在7度目を数える。
実父に関しては、5度目の勾留期間中に職権で一部解除となり、その後、3回面会した段階で7度目の今次勾留決定に至り、いきなり実父を含む包括的な接見等禁止決定に回帰してしまったという流れがある(名古屋地裁民事部所属の佐野静香裁判官)。

さて、佐野裁判官は、5度目に一部解除され、爾来3回の面会をしている実父について、それを知りながら今回、新たに接見等禁止決定の対象としたのだろうか。事件単位で、証拠構造や人間模様も違うから、別件で対象とならなかったから今回も対象とならないと決まったものではないが、本件のように似たり寄ったりの事案で敢えて7度目だけ父親を「具体的な罪証隠滅を疑う相当な理由」の対象に含める積極的根拠は先ずなかろう(現に前掲決定でも全くそういった議論は窺えない)。
してみると、実父の一部解除や面会実績を知らないまま、検察官に請求されるがままに包括的な接見等禁止決定をしたということなのだろうか。「一件記録」に何が含まれているのかは暗闇に包まれているのではあるが(捜査段階の非対等性にはすさまじいものがある)、既に20日強×6度=120日以上も身体拘束されていることや過去の一部解除などの通常被疑者に有利に酌むべき事情について、令状担当裁判官は知り得ないまま判断を迫られているのだろうか。

後者だとすれば、令状裁判実務全体がおかしく、そのおかしさに気付くべきは先ずは裁判所だろう。もし前者だとすれば、佐野裁判官個人の資質(およそ刑訴法所定の要件を満たしているとは思えない親族に付いてまで漫然と包括的な接見等禁止決定の対象としてしまう如き)の問題となろう。
どちらにしても、被疑者には良い迷惑だ。

(弁護士 金岡)