本欄昨年12月12日で紹介した、在宅被疑者の取調室へのノートの持ち込みを巡る紛争は収束しない。「やってない」と豪語する(嘘つき)副検事の行状について検事正に質問状を出すも無視されている状況である。本当に検察庁で持ち込みを「一切」禁じているなら、正々堂々と回答できるだろうから(隠す理由もあるまい)、当該、田中副検事の横着な不行状を不問に付そうとしているのだろうなぁと想像している。

さて、この関係で、昨年近弁連が実施した、弁護人立会を目指すシンポの資料を読む機会があった。関心が惹かれた部分を少し紹介しておきたい。

一つは、かの村木氏の発言である。取調室で弁護人の援助を受けられない自身をプロボクサーとアマチュアボクサーに準えられたところが有名であるが、次のようにも述べられている。
「調書にサインをするときに、具体的にその調書の内容を弁護士に話して、記憶に頼らなくてものを見て話をして、この調書にサインをしていいものかどうかと言うのを、最低限でも相談をしたかった」
立会はおろか、メモすら禁じるという傲慢は、冤罪被害者にどう映るのだろうか。

もう一つは韓国の実情である。
検事取調べに立ち会った弁護人がメモをとったところ、検察官がこれを取り上げて破ってしまう事態があり、立会における弁護人の役割(権限)が明確に法定されていないところから無用な混乱が生じているのではないかと言うことである。・・器物損壊罪には問われないのだろうか。
そして、このような事態が複数生じたからなのか、2017年12月、大検察庁の運用指針において、「隣に着席」「メモの容認」等が掲げられたとのこと。
翻って我が国の現状を見ると、情けない限りである。

ともかくも弁護実践に尽きる。田中副検事には、ノートの持ち込みに拘り取調べを嫌忌するなら報復措置を取ると示唆されているが、その手の権力濫用に抗せる良質な弁護を提供できる弁護士を地道に増やしていくしかないと改めて思う。

(弁護士 金岡)