朝日新聞の本年8月21日付け記事の見出しである。勾留準抗告全件運動の愛知版については、本欄本年8月8日で「恥ずかしい」と批判したところであるが(https://www.kanaoka-law.com/archives/735)、報道記事はこれに拍車をかける。

件名の表題に続く報道記事の出だしはこうである。

「人質司法」に対抗するため、裁判官の勾留決定に不服を申し立てれば1万円を支給します。愛知県弁護士会が9月、凶悪事件などを扱う裁判員事件を除く「被疑者国選弁護」の対象事件で、こうした取り組みを始める。弁護士会が資金面で弁護人の準抗告(不服申し立て)を後押しするのは異例という。

1.「資金面で後押し」。当地で準抗告が低調なのは被疑者国選では資金難だから、とは、初耳だ。お金に困っているから(お金にならないから)準抗告をやりません、という弁護士が沢山いるというアンケート結果も、ついぞ見かけたことはない(ついでに、多額の弁護士費用を徴収する刑事“専門”事務所が準抗告に練達であるとも思わない)。愛知県弁護士会のお偉方には、お金にならないなら職務基本規程の要請を無視する程度の弁護士が多数に映っているのだろうか(私は、知識、技術、成功体験の問題だと思う)。

2.「凶悪事件などを扱う裁判員事件を除く」。あーあ、という感想しかない。捜査段階序盤で「凶悪事件だから釈放は考えないで良いよね」と弁護人が考えることを、会が後押ししている、と、世間は受け止めるだろう(前回記事の通り、愛知県弁護士会のお偉方は、裁判員事件では不当な身体拘束が類型的に少ないと認識し、準抗告を後押しする必要もないと判断されているのだから、このような世間の受け止め方があるとすれば、残念ながら正しい事実認識と言うことになるのだが)。

会長の肝煎りであり、どこで誰が制度設計をしたのかは分からないが、刑事弁護委員会は、こういう事態を止めようと思わないのだろうか。くだんの処置事件の序盤戦のように、感覚のねじ曲がった一部少数勢力が、密かに決めてしまい、今度は是正の動きも起きない(危機感を持ち、腹を決めて一暴れしようという人士がいない)ということなのか。

(弁護士 金岡)