保釈保証金500万円での保釈許可決定に対する検察官準抗告が棄却されたまでは良かったが、資金繰りで計画が狂い、「200万円の自己資金+300万円の全弁協保証書」の納付方法変更許可を申し立てた事案がある。
裁判所はこれを許可したが、検察官が準抗告を申し立てる予定だ、という連絡を受ける。

全弁協保証書事業の開始当初、この種の検察側の不服申立が幾つかあったとは承知しているが、既に過去の遺物になっていたと認識していただけに、少々驚かされた。
そして、改めて判例検索をしても、2015年代に4件、東京高裁の決定例がある程度で、その後は収束したのでは無いかと観測した。
今回も、検察官の準抗告は結局、無くなった。

思うに、公刊物登載の裁判例自体を見かけなくなったのは、全弁協保証書について一定の信頼が得られたからであろう。少なくとも統計的に、保証書の方が保釈取消や没取率が上がるという報告や検証は、なされていまい。
前記東京高裁の4例も、積極消極両様だが、消極例の中には、保釈金納付後に別件で勾留されたため、納付済み保釈金を取り戻そうとしたが上手く行かず、そこで全弁協保証書に代えようとしたという独特な案件も含まれ、また、何れも形式論に過ぎ、およそ参考になりそうも無い。
他方、積極例には、「心理的負担や経済的威嚇については・・借金をして保釈保証金を現金で納付する場合とさほど違いはない」と本質を突いているものもある(2015年4月27日付け決定)。
結局、全弁協保証書でなにか問題はあるのか、つまり保釈保証金の担保機能を損なうような実質があるかということについて、最早、議論は決着したとみて良いのだろう。

なお余談だが、全弁協と支援協会の併用は無理らしいと言うことを初めて知った。
500万円なら500万円で、うち300万円を手数料のお安い全弁協で賄い、足りない部分を支援協会で用立てて貰う、ということは出来ないようだ。効力に違いがないとなれば、商売上、分からなくはないが・・やや鼻白む話ではある。

(弁護士 金岡)