本欄2019年5月30日付けで、件名について取り上げたことがある。
「手錠等を施された姿をみだりに公衆にさらされないとの正当な利益ないし期待」について法的保護に値することを認め、かつ、裁判体に配慮義務を認めた画期的な大阪地裁判決を踏まえ、全国各地で傍聴人の面前での腰縄手錠を容認しない動きが広まった・・と書きたいところであるが、耳に入る範囲では全く活況とは言いがたいようである。

自戒を込めて言うと、(どうしても釈放されない事案の場合に、)悪い意味での慣れがあり、依頼者の尊厳に配慮する姿勢が弁護人にも欠けているのではないか(裁判所は言われなくてもやれよ、と言いたくもなるが、やはり弁護人が諦念にとらわれたり傍観したりしてはいけない)。

本日、第1審の第1回公判で、釈放されていない事案であったため、傍聴人の面前に腰縄手錠姿を晒すべきではないという申入書を提出したところ、すんなりと要望が容れられた(半田支部、秋本円香裁判官)。
方式は、傍聴人を入廷させる前に解錠し、傍聴人を退廷させた後に装着するというものであった。

なお、申入書の提出が開廷1時間30分前であったため(なので自戒を込めざるを得ない)、裁判官からは苦情を言われた。
COVID-19下に人員体制が正常ではなく、しかもプレハブ仮庁舎であるため、「異例」なことを迅速に実行に移すのは困難なのだろう。裁判官には悪いことをした。

・・と、悪いことをしたのは事実だが、見据えるべき現実は、このような配慮を申し入れることが「異例」な対応を迫っていると受け止められる現状であろう。冒頭で述べたとおり、変える努力を怠る弁護人層にも非がある。
法廷メモが当たり前の光景になり、被告人の「お白州席」がなくなり、被告人用の机が当たり前となっているように(そういえば、長い被告人質問時には水を用意するという取り組みも、一時期、やっていたことを思い出した。水に気を回すより、休憩回数に気を回すべきではあるのだが。)、晒さないことが当たり前の光景になるよう努める必要がある。僅か10分の接見で準備は出来るのだ。

(弁護士 金岡)