同時並行で保釈3件を申し立てている時期に、実に時宜を得た特集であった(つい今し方、保釈却下決定に対する抗告認容の一報を受け取ったところである)。

趙誠峰弁護士「無罪主張をしているということは、罪証隠滅の可能性があるという、裁判官のステレオタイプの発想があることも間違いない」

増田啓祐裁判官「裁判所としては、罪証隠滅のおそれ・・・について・・・定型的思考の弊に陥ること無く具体的実質的な観点からよく検討した上で、適切な保釈条件の設定を含めた結論を出すことが求められている」

噛み合っている。
「定型的思考の弊」を理解されているなら、話は早い。
どうしても保釈が無理と断じられるか、保釈条件を工夫するなどして、最後まで検討し尽くすことこそ重要であろう。

これに対し、小長光健史検察官は、除外事由1号ないし3号該当事案は「原則として保釈は適当では無い」として保釈すべき特別の事情を要求する見地を披露する等されているが、(なるほど検察庁から判を押したように出てくる、調子っ外れな強気の意見書はここに源流がある全庁的方針であったかと合点がいったが、)それこそ「定型的思考の弊」というものであろう。個別事案の特徴に即した徹底した工夫を拒む検察官の論文だけが浮いているように感じられたのは、ほんの少しだけではあるが、時代の変化なのかも知れない。

(弁護士 金岡)