窃盗Aで逮捕。
窃盗Aに使用した犯行道具に関する盗品保管で再逮捕。
窃盗A直前に発生した窃盗Bで再々逮捕。

窃盗Bの勾留期間延長に対する準抗告を申し立てた。
結論棄却。

取り上げたいのは、その決定理由である。
原決定理由は、
①携帯電話解析精査未了
②証拠物解析精査未了
③共犯者取調未了
④被疑者取調未了
とされていた。
うち③④は、既に50日に及び一貫して黙秘中の彼/彼女らから今後10日で処分に有意な供述が得られるはずはないと指摘。①はそもそも解錠できないだろうと指摘。②は初回逮捕時から50日がかりで解析しているはずで今更、延長理由にはならないと指摘した。

そうすると、準抗告審は、決定理由中で①について、わざわざ「検察官に電話で聴取したところ、携帯電話の解析は延長期間中に終わる見込みは乏しく・・勾留期間延長の理由とはならない」と説示した。
検察官は、終わる見込みのない携帯電話解析精査を理由に勾留期間延長を請求し、原裁判所はこれを真に受けた、と認められるわけだが、理由のない請求を平然とする検察官は詐欺的であり、これを(電話一本で片付く事実調べもせず)真に受ける裁判官は救いようも無く間抜けだ。

準抗告審は、②について懈怠は無く②の結果を踏まえて③④が必要だとしたが、こちらはこちらで手垢にまみれた救いようのなさを感じるところではある。1度目2度目と同じ解析精査未了という勾留期間延長理由を「まだ終わっていないから」と使い回すことが、果たして「やむを得ない」要件を充たすと思うのだろうか(懈怠で無ければ良いという言い回し自体が、既に「やむを得ない」要件を弛緩させている)。
また、一貫して黙秘している被疑者らに対する取調未了を延長理由に挙げることが、黙秘権行使に対する不利益取扱い、及び、萎縮効果をもたらすと言うことが、何故、分からないのだろうか(携帯解析が間に合わないと弁えているなら、(取調未了を延長理由にすること自体の根源的な問題はさておいても)黙秘解除が期待できないことも弁えられるはずであろう)。
この種の事案は、大体が、このような帰趨を辿っている。刑訴法よりも政策的判断に堕していると思うが、(裁判官が特に優れた見識を持ち合わせるという制度的保障は全くないのだから、)せめて愚直に法律を適用するという基本は外さないで頂きたいものだ。

(弁護士 金岡)