税務調査に於いて税務署職員に不適当な言動があったことを代理人として抗議した案件がある。国賠を考える案件であるが、お偉方が当事務所を訪問して謝罪する(及び担当者を交えて再度の謝罪を受ける)展開となった。

不適当な言動としては、依頼者の言うことを嘘と決め付け、「背任行為になる」「詐欺と一緒だ」「エビデンスを作ってきたら、また潰す」「税務署の手を離れるよ」等と放言して自白を強要したことが中心であり、これを複数名の社員の面前で1時間以上も続けた名誉毀損状態がもう一つの柱である。

政府答弁宜しく「誤解を与えたとしたら申し訳ない」よりは、もう少しだけ踏み込み、(本意ではなかったが)「配慮が足りなかった」「言い方が悪かった」ところまで認めた。
「エビデンスを潰す」というのは「一つ一つ検討する」という意味で、「税務署の手を離れる」は「これ以上は調査を進めない」ということを言いたかったのだ、と言われても、言い訳めいて聞こえる(というか言い訳だろう・・言い訳でないとすれば、普段からそういう遣り口に馴染んでいると言うことなので、より重症である)けれども、国賠で負けても謝罪一つ寄越さない、どこぞの名古屋拘置所や名古屋入管に比べれば、何倍か潔いとは言えようか。

裁判例上、税務調査における不適当な言動が国賠に発展している事例は複数ある。また、考えてみると、刑事事件に至る前の税務調査における「取調べ」は暴力的なまでに執拗かつ長時間であるが、可視化されていない。警察の真似事をやる強権的な権力組織が強圧的に振る舞わないはずはない。ここでも制度的に可視化されれば、より膿が出るだろうこと請け合いと思った。

(弁護士 金岡)