これは又聞きの話であるが、金曜午前に勾留延長があり、その後ほど無くして(午前中に)裁判所から延長準抗告を出すか?と問われた支部の弁護人が「出す予定」と回答したところ、裁判所(名古屋地裁刑事5部)から、検討を早めるためにファクスの先行送付を求められた、という。同弁護士は実際にファクス送付したというし、まあ事実だろう。

正式には原本が必要な行為であっても、検討を早めるために便宜的にファクス送付を行うというのは、まま、行われていることである。

ここで敢えて取り上げたのは、無論、本欄でしばしば問題としてきたように、身体拘束に係る事件を少しでも迅速化するために、弁護人側はファクスの活用を提唱してきた歴史があるからである。
・勾留状謄本の申請書を便宜的にファクス提出して準備を進めてもらい、申請書原本は後日追完する。
・勾留状謄本をファクス送付して貰い、原本の受領は後日行う。
・保釈事件の検察官意見をファクス送付して貰い、正式な謄写は後日行う。
etcetc…
どれもこれも、私の中では実践例があるが、動もすると「裁判書類のファクス送付はやっていない」等と分からず屋の書記官が登場して、もめる。真面目に原本主義を徹底すると数日を要しかねない勾留状謄本の入手を、ものの十数分のファクスの遣り取りで事実上、済ませられるなら、どれほど適正な身体拘束裁判に資するか、考えるまでもない。

話を戻すと、このように(今時ファクスを先進的な情報機器と持ち上げるわけにはいかないが)情報機器を用いて安全に便宜的な書類の遣り取りを行い、実利を得て迅速適正な裁判を工夫する、ということは、あってしかるべきで、しばしば裁判所はごねるが、やっているところはやっている。

今回の話題のように、裁判所自ら準抗告申立書のファクス送付を求めておきながら「うちではやってません」は、もう通用しないよ、と思うわけだ。金曜だから、支部だから、と言おうとなんだろうと、例え本音が「残業したくない」であったとしても、できるものはできる。

(弁護士 金岡)