本欄本年6月11日で報告した、在特義務付け訴訟を題材にした事例報告を依頼され、名古屋行政訴訟研究会にて1時間ほど、お話しし、その後、質疑応答も行った。
同研究会は、全く存じ上げなかったが、かれこれ10年は続いている研究会のようで、そうなると私が名大で行政法科目を教えていた頃には既にあったということなのか・・も知れないが、まあ実際のところは良く分からない(未だに大学かローか、科目名が何だったかすら、認識が定かでない)。

ともあれ、研究者と弁護士の双方が参加と言うことなので、改めて在特義務付け訴訟の歴史などを振り返り、それはそれで有意義なものであった。在特義務付けの理論について、未だ最高裁はうんともすんとも言わないが、十数年の論争を経て、既に理論的適法性は不動となっていることは改めて確認できたところである。

質疑応答では、常日頃から問題視している、入管法が余りにも不出来な法律であること、また、行政権を監視するために工夫されてきた一定の手続保障の埒外にあることの問題性について、一定、伝えられたと思う。
在留特別許可について言うならば、申請権を立法し、それに見合った実体要件、及び適正手続保障を付与しなければならない。
聞くならく、上川法務大臣が、この6月から既に、「送還は告知から原則2カ月以上、後にする」という運用を始めていたと報じられている。勿論、水面下で被執行者を選定し、送還先とも航空会社とも示し合わせた上、告知翌日には強制送還するという非人間的な手口を厳しく指弾した名古屋高裁・東京高裁の各事件と関連付いたものであることは当然であろうが(ところで各地裁は請求を棄却していたわけだが・・その裁判官らは「おとがめなし」なのだろうか。別に制裁を科せというわけではないが、同じような誤判というか愚判を犯さないために、然るべき工夫はあっても良いのではないだろうか)、「原則」とか「2ヶ月」などという、良く分からない運用を入管に任せておけるような事態では無いはずだ。目に見える判決という形で積年の膿が噴きこぼれてきた、この機に、特別権力関係のような、手続保障の埒外の存在を、法の支配の下に据え付け直す必要がある。

(弁護士 金岡)