本欄本年8月24日付けで述べたように、今年は妙に整理手続研修に需要がある。この10月、既に2回の研修をこなした(やはり対面型研修は良い)。
上記でも書いているが、時を追うに連れて考え方が変化すること、また、技術的な発展を遂げると言うことは当然にある。

例えば「携帯電話端末」を巡る証拠開示である。
往時は、固定電話の通信履歴を取り損ねないコツや、複数ある場合に開示漏れを避けるためのコツなどを紹介していたが、いまやスマートフォン全盛であり、一口に「携帯電話端末」と言ってもちょっとしたパソコン端末である。
通信系アプリは(無数にと言うと大袈裟であるが)多様であり、捜査機関の解析できちんと解析されているとは限らない。LINE電話や、その他のアプリ系の電話も数多くあり、それらも含めてこその受発信履歴であるが、実体験として特定のアプリの受発信履歴が丸ごと欠落した受発信履歴解析にかかる捜査報告書を見たこともある。
捜査機関と同一のデータを手元に置かなければ、何度も何度も証拠開示の漏れを指摘し、それこそ数ヶ月が空転しかねないが、それでも結局は証拠開示が十分なのか分からないという事態に陥ること必定である。可能な限り、依頼者と一緒に実機をいじり、情報を漏れなく得る技術に習熟しなければならない。

なので近時は、却って単純化したと言うべきか、携帯電話端末の解析結果に対しては、端末データの複製の開示を受けるか、押収物還付により実機を取り戻すところから始まる(依頼者が被収容者の場合、依頼者との証拠の共有には更なる壁が立ちはだかるが)。
10年一昔と言うが、履歴の取り漏らしを論じていた頃から、隔世の感である。

(弁護士 金岡)