中部版本年12月5日朝刊に、インドネシアのオンライン刑事法廷に関する報道がされていた。なかなか興味深い内容であったので紹介する(それにしても毎日新聞社の名誉毀損報道敗訴確定は、いつになったら報じてくれるのやら。有耶無耶にしてしまうつもりだとすると潔くないこと夥しい。)。

冒頭、とある死刑判決の言い渡しである。被告人は拘置施設からオンライン参加、法曹三者と通訳人は法廷に集まった。被告人は判決が聞き取りづらかった模様で、死刑かどうか聞き直していたという。

ネット環境が不安定であることに起因する問題はさておいて、記事中でも批判的に取り上げられているが、被告人が拘置施設に留まり、隣には刑務官がいるという問題は言うまでもなくひどい。そんな環境では、基本的に言いたいことを十分には言えないだろう。

また、「米国のビデオリンク式裁判に関する研究」によれば、感情を伝える周波数がオンラインではかき消される場合がある、というのも興味深い。非言語的な要素が心証にどの程度の影響を与えるか、というのは未だ研究途上にあるようだが、非言語的な要素が無視できないことは明らかだろう。その時に感情を伝える部分がかき消される意思疎通を強いると言うことは防御権を侵害する。
同時に、米国の保釈裁判では、オンラインによる審理の方が保釈金が51%あがる、という報告もされているそうである。
総じて、オンライン方式により絶対に防御上の不利益がないかが確認できるまで、見切り発車の導入は許されまい。

勿論、通信不安定に陥った場合のことも考えなければならない。少々の不具合に対しては審理計画や証人出廷の負担軽減を優先させようという発想が出ないとは限らない。

冒頭の死刑判決案件は論外として、制度を立ちゆかせるために受入を強制する、と言う場面は避けなければならない。裁判員裁判を強制していること自体が愚にもつかないことだと思うが、歴史が繰り返されはしまいかと、猫も杓子もウェブ会議、となりつつある民事訴訟を見ていると心配になる。

(弁護士 金岡)