本欄では因縁めいて取り上げている、盛岡の交通事件である。
(差し戻し判決の紹介記事)
https://www.kanaoka-law.com/archives/598

本日、差し戻し審の判決(加藤亮裁判長)があり、無罪判決であった。

検察官の主張は、車間距離保持義務違反と先行車に対する動静注視義務違反の複合過失であったが、差し戻し審の判決は(以下は判決宣告時の手控えによる)、
1.保持すべき車間距離の算出に、一般的な空走時間に加えて更に「1~2秒の余裕時間を加えるべき」とした検察官証人の主張を採用せず、その結果、車間距離保持義務違反自体を否定し、
2.差し戻し前第1審以来、各判決で排斥されてきた被告人の前方不注視の主張を、同様に排斥し、
3.結果回避可能性は動静注視義務違反の前提要素として検討の上、後方車両からの追突を回避するため急制動による回避は不可能であるが、それ以外の回避方法について検察官が具体的な主張立証を行っていないとして、結果回避可能性を否定し、
以上の諸点から無罪を導いた。

ところで、差し戻し判決は、前記記事で紹介しているとおり、「現実的に採り得た結果回避行動について具体的に主張を明示するよう検察官に促す」必要があるとしたが、差し戻し審における検察官は、実に2年以上を費やして、「先行車の動静に応じて適宜制動措置を講じること」としか主張しなかった。弁護人が、これに対し猛然と抗議したことは言うまでもないが、裁判体は、かかる主張により訴因及び争点は具体的に特定されたとして、弁護人の抗議を受け付けず、審理入りを強行したという経過がある。率直に言えば、「この裁判体は日本語すら通じない」という思いであった。

この点、本判決では、結果回避可能性について、検察官が具体的な主張立証を行っていないと評価した上で、ここまで争点化している状況に照らせば、これ以上に検察官に主張立証を促すことは相当ではないとしたが、審理入りを強行した段階と、言っていることが違うのではないかという不審の念を強くする。起訴から約8年、差し戻し審だけで約3年、結局、検察官が結果回避可能性(これが過失の本質を構成することは刑法学の初歩である)について具体的な主張を行わないまま、審理が強行され、判決に至ったという経過を、検察及び裁判所は猛省すべきであろう。

(弁護士 金岡)