先日、「刑事弁護リーダーズネットワーク」への掲載のお誘いを頂いた。
https://www.keijibengoleaders.net/
運営している弁護士や掲載弁護士を選定する「選定委員会」の顔触れは、全国単位で名の知られた弁護士で固められており、(オリンピックには些かも関心が無いが)差し詰め「日本代表選手団」の様相である。同業者や裁判所、検察庁にも異論はあるまい。

これに加わることは名誉なことであろう。
また、ネットワークの理念には強く共感できるところである。
ごく当たり前の弁護活動をさも特別なことのように喧伝するサイトは巷間に溢れ、内乱罪のように凡そ弁護の経験が無いだろう罪名を掲げてまで宣伝に熱心なサイトもある。身内が逮捕されて慌てて法律相談に行ったらウン十万円先払いと言われて悄気返った依頼者を引き取った経験も複数ある。
このような、正しく消費者被害を巻き起こす営利営利の事務所群に対し、本当に良質、良心的な弁護機会の拡充に努めることは、大いに賛成である。

従って、一も二もなく賛同すべきところではあるが、結論として掲載はお断りした。
その理由を挙げてみると、
1.掲載に応じることで、隅々までネットワークの記載内容に同調しているとみられる可能性がある。私は私であり、隅々まで同調できる保証はない。まして、後々、加筆されていくだろう内容に至ってはどうにもならない。口にすること、理念の表明には、隅から隅まで責任を持ちたいものだ。
2.今後掲載される弁護士に、個人的に評価しない顔触れが登場する可能性がある。同列にされたくない!、ということも考えておかなければならない。1とあわせ、後足で砂をかけるような事態になるくらいなら、最初から関わるべきではなかろう。
3.サイトでは「刑事弁護を専門的に扱う」「プロフェッショナル」といった形容語句が用いられているが、日弁連の広告運用指針(平成22年11月17日)では避けるべきとされている語句である。確かに、専門を自称する営利営利の事務所群に対抗するには、そういった的確な形容語句を用いなければならないが、指針で避けるべきとされている以上、同じ穴の狢と言われかねない。
4.運営側の顔触れからは、掲載範囲は日ごろ繋がりのある面々にしか広がらない可能性が高い。それとなく探ってみても、相応の実力をお持ちの先生が「初耳」ということからすれば、当たっていよう。言わば仲良し集団の中で厳正な評価による掲載方針が維持できるか。縁故で過大評価されたり、縁故がないために声がかからなかったりしないか、疑問である。例えば、私のどこが、どのような基準で評価されたのかも、透明でないといえば透明でないのである。
といったところである。
前記理念を犠牲にするほどのことと捉えるか、理念を優先して甘受すべきか、迷わなくはなかったのであるが、こういうところに拘ってしまう性格は変えられない。

ネットワークが、義憤に駆られ若しくは純粋な思いから立ち上がったことは、痛いほど分かる。繰り返しになるが、その理念には強く共鳴する。
他方で、この種の宣伝、組織化の難しさも、改めて痛感した。
「言ったもの勝ち」の消費者被害を阻止するには、同じ次元で言い合わなければならないのだろうか。知る人ぞ知る、では理念が果たされないが、大々的に宣伝すれば、傍目は営利営利の事務所群と同類項である。
専門資格制度を導入し取り締まりを強化するとか(即効性はないし、却って事態が悪化する危険もあるが・・)、もう少しclosedな組織化を図るとか(極めて分化した学会のような組織化は一考に値しよう)、別の道はないものか。考え続ける必要はある。

(弁護士 金岡)