本日の名古屋高裁、大法廷での検察側証人尋問が実施されたが、実施に先立ち被告人を弁護人の隣に着席させるよう申し入れ、すんなりと認められた(山口裕之裁判長)。裁判員裁判ではすっかり定着した、この光景、実は裁判員裁判以外では極めて例外的である。

振り返ってみれば、15年前、被告人が裁判官の正面に座る「お白州席」が一般的であり、被告人と弁護人は会話もできなかった。その後、被告人が弁護人の前に座る運用が主流になったが、机もなくぽつねんと座っていた(机を置くよう要求して容れられた岐阜の案件は今でも覚えている)。
高野隆弁護士の教えで始めた「SBM運動」は、こと身体拘束中でない事案では殆ど認められるようになり(季刊刑事弁護52号の共著論文参照)、仰々しい申入書もなく、パッと隣に座って貰って何も言われないまでになった。
他方、裁判員裁判導入により、被告人の着席位置その他の見た目が気にされだし、ネクタイっぽい服飾品、革靴っぽいスリッパ、弁護人の隣に着席、ということが一般化した。

さて、以上の流れにも拘わらず、身体拘束下の通常事件(裁判員裁判以外)では、依然として隣への着席は例外的である。
一つは拘置所の抵抗である。裁判員裁判で戒護に支障がないのに通常事件で支障があるというのは理解に苦しむが、とにかく、抵抗する。確か2年前、正面から「応じられません」と反対された裁判官が折れると言うこともあった。
もう一つは、弁護士層の意識の低さである。身柄拘束中でない事案ですら、隣に座って貰おうという弁護士は少数である。況んや身体拘束下の事件をや、ということである。

私の中では、身体拘束下の事件の数件で、裁判員裁判と同じような隣への着席が認められた経験である。被告人と耐えず意見交換をしながら尋問に臨むべき案件では毅然として求め、認められている印象ではある。やはり、裁判員裁判で戒護に支障がないのに通常事件で支障があるという珍妙な意見に説得力はないのであろう。あとは弁護士層の意識の持ち方一つで、更に変わっていくのではないか。

山口裁判長にも言いたいことは沢山あるが、隣に座って何が問題が?という意識の裁判官が増えると嬉しい。

(弁護士 金岡)