本欄「ある裁判官面談」で、特に若手裁判官の身体拘束裁判の面談が紋切り型で意味がない趣旨の指摘をしたところであったが、つい先日の若手裁判官との面談は面白かった。
せいぜい5分かな、と思いつつ参上したところが、あれやこれやと話が噛み合い、15分にも及んだ(御陰で期日に10分遅刻する羽目になった)。

詳細は控えるが、無論深刻な否認事件であり、弁護人主導で争点整理を試みている関係で、「検察官がこう来たらこう」「ああ来てもこうか」等と、公判前整理手続段階にしては相当、深い話が出来た。ジュリスト松本論文は今でも金科玉条の価値があるが、「身体拘束中であると、打ち合わせを行うのにどうしても時間的、場所的に制約が生じるから、十分な弁護活動のためには保釈の必要性が一段と高まる」とする。全く異論の余地がない。手続段階の移り変わりに敏感に、防御上の必要性を丁寧に見て頂けると、「分かっている裁判官だ」と思わされる(もっとも、そういう事案では、手続段階が移り変わらなくとも端っから防御の必要性は高いので、あまり痛くもない腹を探ってほしくはないのだが、裁量保釈の総合考慮的な性質上もあってか、なかなかそこまでは到達しない)。

面談の感触一つで楽観していても仕方がないが、好感触だなと思っていたところ、保釈が許可され、「不相当却下」意見の検察官は予想通り抗告してきたが、2時間も経たず準抗告棄却となった。
準抗告棄却決定が「多数の証拠を踏まえた弁護人との綿密な打合せが必要であることなど、相応の裁量保釈事由も存在する」としたのは、改正刑訴法の影響があろうが、先の原審担当裁判官の反応、関心の向け方が優れていたことを裏付けている、と思われる。

(弁護士 金岡)