また、この手の・・とうんざりしたのが、前川元次官の市立中学での講演内容について、文科省が市教委に対し、前川氏を呼んだ経緯や講演の内容を問い合わせ、録音データの提供を求めていたという出来事である(本年3月15日報道)。
取材に対し、文科省側は「前川氏が天下り問題で国家公務員法違反と認定されたことなどについて、(学校や市教委が)どこまで十分にわかっていたかを確認しようとした」と説明しているとのことだが、さっぱり理解できない。

いまや私人の講演者に公務員時代の処分歴があることを、主催者側が分かっておかなければならないこともあるまいし、そこに国家が割って入るとなれば尚更だ。もし主催者側が分かっていなかったとして、御丁寧にも処分歴を教えるなら、名誉毀損になる。また、私人の講演内容を国家が把握しようとすることは私的領域への介入でプライバシー侵害になるだろう。
「こんなやつを呼ぶな」、あるいは粗探し目的であろうことは請け合いで、畢竟、教育の場には相応しくないという美名の下に横槍を入れようとしているのだろうけども、国家権力が不都合な人物の社会的な活動を執拗に排除しようという姿勢(総理大臣が講演するとして文科省が内容を調査しようとはしないだろうし、失言大臣の類いの講演でも同じことだから、実に見え透いている)は、滑稽でもあり醜悪でもあり、ついでに空恐ろしくもある。

強きに阿り、権力を行使する方向も誤っている。イスラム教徒の情報収集事件やシーテック事件など、形を変えては立ち現れる病巣である。モリカケも重要だが、これも、公権力による反対勢力監視事例として注目され、糺されるべき案件だと思われる。

(弁護士 金岡)