傍聴席ノートパソコン国賠を提起した当時、懸念していた「反動」として、傍聴人注意事項板に「ノートパソコン禁止」と書き加えられるのではないか、ということがあった。
本日現在(6月23日確認済み)、幸いにして名古屋地・高裁でその現象は見られないのであるが、実は既に、「ノートパソコン禁止」にしている庁がある。

岐阜地裁である。

本年6月20日に確認したところでは、傍聴人注意事項板に上から白く、修正がかけられ、「携帯電話、スマートフォン、パソコン等の電子機器は、入廷前に電源を切るか、サイレントマナーモードにし、法廷内では使用しない」とされている。(パソコンのサイレントマナーモードってなんなの?という突っ込みはさすがに野暮か・・言葉を大事にすべき裁判所の仕事にしては実に粗い)
名古屋地・高裁はちなみに、提訴当時も現在も変わらず、「携帯電話」の使用禁止と、無許可の撮影・録音・送信の禁止である。

このように、岐阜地裁は、電子機器を一律禁止している。全庁的に注意事項板を書き換えるのだから、いわゆる裁判官会議で決定したと言うことなのだろう(個々の裁判長が、裁判官の独立の下、法廷警察権行使として許したり許さなかったりすることが出来るとするなら、一律禁止を、例えば所長の一存で決めてしまうことは違憲だと思われるからである)。

仮に、岐阜地裁に傍聴席ノートパソコン国賠を提起したら、担当裁判官は必ず「一律禁止派」という、恐ろしい事態に見舞われようこの事態、上記の白い修正から見て、以前からのものとも思われず、私の傍聴席ノートパソコン国賠が原因なのは先ず間違いないだろう。議論をしましょうと問題提起した途端、「うちでは一律禁止にしましたよ」と有無を言わさずやられては、裁判所の公正中立なんてものは所詮、お題目で、つまらん行政機関なんだなぁと実感させられるものである。
果たして、岐阜地裁では、傍聴席におけるノートパソコン需要や、弊害の有無を、多様な価値観に耳を傾け議論したのだろうか。それともそうではなく、狭い了見でやらかしたのだろうか。裁判官だけで決めれば、まず間違いなく法廷傍聴とは無縁の方々のことだから、利用者目線は出まいし、事なかれ的管理主義に走るだろう。
岐阜弁護士会には、機会を捉えて協議事項として貰いたい。

(弁護士 金岡)