本欄平成29年12月6日で、「最高裁判所の判断に違和感」として、理論的ではなく、公営放送は守り、福祉給付を受けるべきものは切り捨てる姿勢を感じると指摘した。

近時接した、平成30年7月17日の最高裁判決は、やはりNHKの受信料債権について、今度は民法168条1項の定期金債権としての消滅時効が問題となった事案であり、契約者側は、20年間、請求がなかったので消滅時効が完成していると主張したのであるが、最高裁判所は、定期金債権該当性を認めた上で、しかし公共性からすると、民法168条1項を適用して、受信契約を締結している者が将来生ずべき受信料の支払義務についてまでこれを免れ得る事態を引き起こすことは放送法の趣旨に反するとして、同条項の適用を認めなかった。
租税債権でさえ時効消滅が予定されているというのに、NHKの受信料債権をかくも優遇する。理屈も何もない。一体全体、最高裁判所は何に阿っているのだろうか。ここまで公共性に加担されては呆れる他ない。

ついでに言えば、平成30年7月19日の再任用拒否事件の逆転判決もひどかった。
国旗国歌に対する起立斉唱を拒否した教員の定年後再任用拒否が問題となった事案において、最高裁判所は、「任命権者である都教委が,再任用職員等の採用候補者選考に当たり,従前の勤務成績の内容として本件職務命令に違反したことを被上告人らに不利益に考慮し,これを他の個別事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価し」て再任用拒否することも裁量の範囲内だと述べた。
特に、起立斉唱拒否を「他の個別事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価」することが許される、という部分には目を疑った。
明らかに、本件再任用拒否が「被上告人らが本件職務命令に違反したことを不当に重視する」ものであり、かつ、再任用実態(過去約10年で、概ね90~95%で推移し、全員合格の年もあったという)に反するとした東京高裁判決の方が常識に適う。
改めて、一体、何に阿っているのか、と思う。この判決の裁判長は山口厚判事であり、本欄ではかつて、山口判事の任命経緯にいかがわしさを感じることを指摘していたが(本欄平成29年3月18日)、その記事へのアクセスが急増したことは、決して偶然の事象ではないだろう。

(弁護士 金岡)