外交問題を戦争で解決するしかないという趣旨の発言をした丸山穂高議員問題が話題である。議員の失言を本欄で取り上げる必要はないが、今回は憲法問題が絡むので取り上げておこうと思う。

辞任勧告決議案は、①元島民の方々のお気持ちを傷つけた、②「北方領土」返還に向けた交渉の阻害要因、③平和主義に反し、④国際問題にも発展しかねず国益を損なう、⑤国会議員枠で参加しており国会の権威品位を著しく害した、という根拠から成る。

このうち、③については、紛争解決手段として戦争を持ち出すことが憲法9条に明確に反しているのだから、憲法尊重擁護義務の観点から責任を免じようもなく、結論に於いて議員資格を失わせるべきことは当然だと思う。

他方、①②④⑤については、局面が変わると「多数派の国会議員はいつでも少数派の国会議員に辞任を強要できる」論法として用いられる危険があり、国会議員の身分保障との兼ね合いでも辞任勧告の理由としてはならないと思われる。
「A議員は、自衛隊が違憲であると述べて、自衛隊関係者のお気持ちを傷つけ、また、自衛隊の我が国への献身的な貢献への阻害要因を造り、国益を損ね、国会の権威品位を害した」などという辞任勧告の呼び水にもなりかねないからだ。
身分保障は、全体主義に対する制度的な保障であり、それがあるから少数の立場に立ち続けることが可能になるというところに眼目がある。全体的な雰囲気で奪ってよいものではない、ということもまた、憲法的な発想として必要である。(ついでにいえば、明らかに反憲法的な現与党がのうのうとして存在していること自体、②④⑤のような指摘が恣意的に濫用される危険なものであることを窺わせると言えるだろう)

従って、憲法論的には、9条違反、99条違反のみを理由とした辞任勧告が賢明であり、それにより、憲法の未達成部分の次元に向けた議論を深める契機とするのが良いように思われる。憲法を守る気があるとは思われない、いまの与党には期待すべくもないだろうけど。

(弁護士 金岡)