愛弁の会報「ソフィア」2019年5月号に掲載されたものである。裁判官を個別に多様な評価項目で五段階評価し(5=大変良い)匿名処理して公表するというものである。意義がないとは思わないが(希望があれば当該裁判官には自身への評価を公開する由である)、どうかと思う部分もある。

まず地裁刑事部については平均「3.62」。普通より「良い」寄りである。分析結果曰く「量刑の適否が刑事裁判官の評価に大きく影響する」のだとか。なるほどさもありなんである。多くの刑事事件は依然として緊張感に乏しい量刑のみの事案であろう。異議が飛び交うことも無いし予定調和も多い。相対的に多数をこのような事件が占め、且つ、通年で同じ裁判官に複数回、当たることなど滅多に無いとなれば(普通の弁護士層はそうだろう)、そうそう「3」を切るような回答にはなりづらいから、結局、3~4に落ち着こう。
「争いがある事件かどうか」でアンケートを分けないと、適切な結果は得られまい。

続いて高裁刑事部。4名が対象となり、4名平均2.17と、かなり「悪い」寄り。うち2名は1点台という体たらくではあるが・・やはりどうかと思う部分がある(続きを読めば分かるが、こんなに「高い」評価がでてしまうのはおかしいという趣旨である)。
第一に高裁刑事部は合議事件しか無いから、陪席裁判官の個性は凡そ見えない。従って陪席裁判官については、裁判長の評価に引きずられつつも、本気で1や2をつけるほど印象に残らないから、2~3に落ち着いてしまうのでは無いかという懸念がある。
第二に、アンケート評価項目に「公判前整理手続は適切か」が含まれていること。言うまでもなく控訴審に整理手続規定は適用がないとするのが通説的理解である。このような意味不明な質問項目を設定した愛弁の見識もお粗末だが、これに対し回答した方も回答した方である。事実、同項目について「3」や「4」がついている裁判官がいるのだから、このような不適切な設問もまた、陪席問題と同様、誤って平均点を押し「上げ」てしまったことは想像に難くない。

折角、裁判官評価アンケートをやるなら、見かけだけましな数字が一人歩きしたり、実態と乖離した高評価にならないよう、もっと工夫しなければならないだろう。

(弁護士 金岡)