季刊刑弁101号の特集は「証拠開示制度のあり方、活用の道を探る」。
論文1本と座談会出席という形で関わった。
自著論文は「捜査機関による近時の証拠収集と刑事弁護対応」。電磁的記録に関わる捜査、微物鑑定に関わる捜査について、経験している限りの最先端を詰め込んでみた。収集能力(弁護人は殆どの場合、捜査機関の後塵を拝する)においても分析能力(弁護人は専門家を見つけるだけで大変)においても、彼我の力格差は大きく、法制度も旧態依然たるままである。結論、制度改革と予算手当てなしには、ごくごく一部の(有能で、経験もある)弁護士以外、圧倒的に劣勢で、抵抗すらままならないだろうと思う。

特集の中で興味深かったのは山本弁護士の「証拠開示の方法論」で、かねてから流派が違うと感じていた(この辺は座談会参照)類型証拠開示請求書の実物を拝めたこと。なるほど、流派が違う、としか言いようがなく、分析した結果、手になじんだ方法から乗り換えることはしないと結論した。

その他、本欄で取り上げた「刑の執行猶予言渡取消請求棄却決定」(本欄2019年10月15日)の担当弁護士による報告や、法社会学の観点からの連載「刑事弁護の変化と課題」(宮澤教授)等、盛り沢山。久々に、「さぁ読むか」という気持ちで読まなければならなさそうな分量であった。

(弁護士 金岡)