捜査段階の一コマ。
勾留裁判を控えて意見書提出など忙しくしている最中、書記官を通じて「弁護人選任届の原本が検察庁に届いていないので、正式に弁護人になられているとは言えないというのが裁判官の考えです。」との一報を受けた(杉山孝裁判官)。

碌に刑訴法を理解していない裁判官に出くわすことには慣れっこであるが(以前、余りにひどい訴訟指揮に憤慨して、学部生向けの刑訴法の教科書をまるごと一冊、裁判官宛に送りつけたことがあるのを思いだした)、これまたひどい。
刑訴法、刑訴規則のどこにも、捜査段階の弁護人選任行為が弁選原本の検察庁への提出を要件とする要式行為であるなどとは書かれていない。要は、選任意思・受任意思が疎明されていれば十分であり、それが「何時でも」弁護人を選任でき実効的弁護を受ける機会を保障した刑訴法の精神に適するはずだ。
実際上も、この裁判官の見解を採用すると、特に遠隔地の弁護人は、郵便事情による配達待ちの間、被疑者から弁護を依頼されて引き受けているのに、弁護人としての活動が認められないという背理した状態が出現し、弁護人選任権を保障した憲法に悖る。

刑訴法に従う弁えのない裁判官が令状審査をする等というのは、実に笑えない。

(弁護士 金岡)