件名について、正気を疑う判決を受けた。
服役中の検察側証人に対し、反対尋問準備のために刑事施設で面会することとしたが、種々の妨害を受けたために国賠になった事案である。

前提となる論点が、弁護人の反対尋問の事前準備としての服役囚との面会の法的権利性である。裁判所(名古屋地裁民事第4部合議係、岩井直幸裁判長)の法的権利性を否定した理由が問題だ。
曰く「反対尋問権は法廷において行使されるべきであり、法廷外で行われる証人に対する事前面接は、反対尋問権それ自体とは異なるものである」ことが否定理由の一番手である(その他には、このような事前面接を保障する規定がないことが挙げられているのみである)。

不可分に付随する事前準備(山室本でさえ事前準備としての事前接触の有用性を謳っているし、近時の主流が、事前接触を推奨するところにあることは類書から明らかである)を切り離す神経は、どうかしていると思わざるを得ない。
このような裁判官は、畢竟、法廷に向かう裁判官を通行妨害して法廷に行けなくした場合でも、「裁判は法廷で行うものだから、法廷に向かう裁判官を通行妨害しても、裁判妨害ではない」と判断してくれるのだろう。法廷に向かう裁判官を通行妨害しても、裁判妨害ではないし、法廷に向かう権利を保障した規定もないので、業務妨害罪も否定してくれるに違いない。

・・少しは自分の頭でものを考える習慣を身につけて欲しいと、切に思う。

(弁護士 金岡)