【1】
鑑定留置理由開示公判期日指定を巡る騒動の経過報告である。
鑑定留置理由開示手続については、以前、まとまった論考を載せたので、気になる方はそちらをどうぞ。大事なことは、刑訴規則131条により勾留理由開示と同じになるということで、裁判長は期日指定にあたり「やむを得ない事情」がない限り、「請求があった日から」「五日以上」を置いてはならない、という制限があることである。

さて、月曜日に理由開示請求を行った。
すると翌火曜日、裁判所から、翌週の火曜日の打診があった。
金曜か月曜を想定していたので、おやとは思ったが、とりあえず差し支えが続発してどんどん先にされると困るので、相弁護人や親族の日程を調整しつつ、裁判所に対し、「やむを得ない事情」を具体的に説明するよう求めた。
つまり、月曜=請求があった日なので、1日を置くと水曜の期日指定となり、2日を置くと木曜に、3日をおくと金曜に期日指定することになる。
土日を控除して良いかは争いがあるが(戸舘本には、沖縄弁護士会が年末年始をすっ飛ばした期日指定に抗議したことの紹介や、逆に1月3日に期日指定された広島の武勇伝が紹介されている)、控除して良いとして、翌月曜だと4日を置いたことになる。従って、翌週火曜日は、「請求のあった日」から5日(火、水、木、金、及び翌月曜)を置いたことになるから、「五日以上を置くことができない」制限にひっかかることは明らかだろう。

初日不算入だと話は違ってくるかもしれないが(戸舘本は「初日不算入として」と濁している)、法文上「請求があった日」起算とされているので、それはないと思う。また、月曜請求で、1日を置くことが、「即日」ではないから火曜日なのか、文字通り1日を挟んで水曜日なのかも、よく分からない。もし前者と捉えるなら、本件の場合、金曜が期限となる。
どちらにせよ、翌火曜日で良いという結論には至らないはずだ。

【2】
で、話を戻すと、翌週火曜日だと「やむを得ない事情」が必要になるので、期日指定前に説明するよう求めたのに対し、なんと裁判所は「説明を拒否する」(森島聡裁判官)という対応に出た。
憲法は、理由開示を「直ちに」としており、その「直ちに」が刑訴規則で「五日以上」置かないという具体化をされている。つまり「五日以上」に「やむを得ない事情」が要求されるのは憲法上の要請であり、憲法に沿った訴訟行為になっていることの説明を求めたことに対し、「説明を拒否する」とはまた、非常識なものである。

こういうことをされると、「五日以上」の候補日が出てきた場合、「やむを得ない事情」の説明を先に確保するまで、調整すら拒否しなければならなくなる。その結果、本当に「やむを得ない事情」がある事案だと、そうやって揉めている間に1日、2日と時間が経ち、本来であれば調整できたはずの「五日」を置いた期日が差し支えになり、どんどん、理由開示公判が遠のくことになりかねない。そのとばっちりを受けるのは被疑者であり、弁護人としては、憲法違反の訴訟行為を甘受するか、筋を通して理由開示公判が遠のくのを甘受するか、究極の選択を迫られることになる。
これというのも、上記のような意思疎通機能不全裁判官のせいである。

【3】
話はここで終わらない。
「やむを得ない事情」の説明がないなら、「五日以上」を置いた翌火曜指定は違法だから取り消せという不服申立を提起することになった。
で、これは法429条の準抗告か、法309条2項の異議か、どちらだろうか。
戸舘本に記載はなく、ついでに御本人にも取材したが、分からないとのこと。前掲沖縄弁護士会の案件など、不服申立に発展していないのだろうか?現行刑訴70年余、理由開示公判期日指定に対する不服申立案件がないはずはないのだが、まあ調べ切れていない。

で、とりあえず準抗告を申し立てたところ、名古屋地決(蛯原裁判長)は、不適法だという判断を示した。
であれば異議の方かと言うことで、異議を申し立てたところ、森島裁判官は、理由を示すことなく、これを棄却した。

「やむを得ない事情」の説明を拒否して、騒動の発端を作った森島裁判官が、異議審においても、具体的理由を示さず、異議を棄却する。最早、悪い冗談である。例えば「初日不算入で、水・木・金・月の4日しか置いてないから、やむを得ない事情は不要」とか、「これこれの理由でやむを得ない」とか、なにか言えば、収まりも付こうものの、徹底的に意思疎通をする気がない。

因みに「条解」では、法309条の異議に関して、「精粗に差はあるものの理由が示されることになる」と指摘する。義務的ではないにしても、それが裁判官の矜持であり、裁判の本質でしょ、ということなのだが、前記、意思疎通機能不全裁判官にはそのような真っ当な議論は通用しない。

結局、月曜請求に対し、「なぜ翌日火曜が許されるのか」問題を巡り、特別抗告が2通(準抗告棄却に対するものと、異議棄却に対するもの)、出揃うことになったのが現状である。

【4】
「五日以上を置く」計算方法にしろ、「やむを得ない事情を要するか否かやその内容」説明にしろ、不服申立の手続にしろ、定まっていないことが多すぎる。

そして、おかしなことをしでかす裁判官ほど、頑なになるというお馴染みの現象。
今回の森島聡裁判官の場合、「五日以上」違反ではないなら流石にそう言うだろうから、合理的な説明の付かない「五日以上」違反を行い、説明に窮して黙りを決め込んでいるのだろうと、こちらでは勝手に思っているが、繰り返しになるが、こういうことをするなら、こちらはこちらで、余計に構える。馴れ合いは禁忌であるとしても、常識的意思疎通一つ、上手くいかないとなると、裁判運営はどうしてもおかしくなる。

とにかくも、憲法上の例外たる「五日以上」違反かどうかも、理由も示さないで済むような司法手続を戴く国は、果たして法治国家だろうか、と思わされている。

(弁護士 金岡)