民事刑事を問わずカルテの取り寄せが必要になることは多い。
相手方が公的な病院かそうではないかで手続的な違いはあるが、概して、よく分からない独自の運用に邪魔をされること屡々である。
本欄でも、少なくとも2016年3月24日、開示手数料の問題について取り上げたことがあるが、爾来10年、無論のこと何事もなかったわけではない。
開示手数料の問題以外では、①開示目的をしつこく聞かれる、②親族以外の代理を認めようとしない、③本人確認書類が限定的に過ぎる、④弁護士会照会に依ることを要求される、⑤申請手続或いは交付手続のために来院を要求する、等などがある。最近では、開示前に必ず主治医の面談を行う運用にしているとする民間クリニックにも出くわした。
こういった問題は、取りあえず「診療情報の提供等に関する指針」を参照することになる。①に関してであるが、「患者等の自由な申立てを阻害しない」ため、開示請求理由の記載を求めることは不適切であるとされている(従って、うちでは理由を聞かれても回答を拒否することにしている・・・仮に「交通事故被害の賠償請求のためです」のような、容易に説明し得るかもしれない程度の理由であっても、安易に回答することは手続的に正当とはいえないし、そうやって弛緩した対応をしていると、現場が益々緩むことを助長するため宜しくない)。
自由な申立を阻害するかどうかで言えば、不合理な本人確認書類の限定や、来院あるいは弁護士会照会の強要も指針違反であろう。
今回、福井大学医学部附属病院(従って国立病院ということになる)から、郵送によるカルテ開示は行っていない(郵送希望なら弁護士会照会にせよ)という対応を受けたので、5分で内容証明を書き上げ取りあえずファクス送付したところ、2時間もしないうちに、その対応は撤回された。
しかし、常識的に考えて今回だけ誤って来院を強要したわけではあるまいから、同病院では基本的に郵送によるカルテ開示は拒否しているのだろう。どれだけの被害者を生んだのか、考えると、そら恐ろしい。
(弁護士 金岡)