【1】
判タ1536号掲載のものである。
民事家事も興味深く読んだが、やはり刑事分野を取り上げたい。

【2】
まず、否認事件の審理期間の長期化が顕著である、として、2015年には平均8.4か月であったものが一貫して右肩上がりに推移し、2024年には平均11.4か月に至っていると報告されている。

昨年無罪になったうち、第1審を私が担当した2件は、それぞれ、
(1)検察側証人1名及びAQで14か月、
(2)検察側証人5名及びAQで3年、
であったから、どちらも平均超えであるが、(1)事件は構造が単純で証拠数も少なく、証拠開示もそこまで混迷するような事案ではなかったが、それでも14か月、という点を重く見たい。
平均11.4か月ということは、ものの半年やそこらで判決に至った否認事件もざらにあるということになるが、検察官の主張構造立証構造を十分に解明できるだけの遣り取り、及び弁護方針を立てきるための証拠開示を尽くした上で、半年で終えられる否認事件など想像することすら困難であり、察するに、無策、手抜きの弁護が圧倒的に多いのだろう。

本公表は「長すぎる」と言いたいのだろうが、私は「著しく短すぎる」と思う。

【3】
次に長期化要因であるが、①電子データを巡る証拠開示に検察側の時間がかかること、②鑑定意見を要する事件、③黙秘事案は長期化要因か寧ろ逆かで認識の相違がある、④証拠開示について、弁護側が広範に開示を求めること、検察側でマスキングや謄写に時間がかかること、⑤弁護人の主張が不明確であるとして紛糾する、あたりが挙げられている。

①④はそのとおり・・というか、正にそれである。検察側の証拠開示が遅いことは、本欄でも度々、話題にしているが、たかだか百数十点の証拠開示に回答を終えるまでに半年以上がかかるとか、スマホの開示一つに数ヶ月の検討期間を要求するとか、正気を疑うようなことが、まま起きている。
②は事件の性質上、やむを得ないことであり、長期化と言うには当たらない。
③は全く長期化要因ではあるまい。乙号証があると逆にごたつくからである。
⑤はピンとこない。検察側の主張構造が不明確なので紛糾することはままあるが(前記紹介にかかる(2)事件などは正にそれであって、臆面もなく控訴審で更に新しい主張を展開した検察に対し、控訴審裁判所が流石に(判決で、ではあるが)主張の変更自体を批判したほどである)、弁護人の主張が、検察官における立証方針の確立を阻害するほどに不明確なままの事案など、経験したことがない。

結局のところ、現行の証拠開示制度は、飛躍的に弁護の精度を高めたが、それを活かしきるためには、極めて非生産的な、証拠開示されるべき一覧作成⇒検察官の不十分な回答を何度も是正させる⇒電子データを中心に異常に待たされる⇒証拠が出そろわないと全体的な検討が不可能であるため無意味に長期化する、という、全面的に制度の建て付けと検察庁の対応の拙さによる長期化要因となっている、というのが事実である。

判タ1536号掲載論文は、傍から見る限り、十分に現場を知らない、底の浅い分析にしか見えなかった。

(弁護士 金岡)