本日、松阪簡裁で無罪判決を受けた。
事案は、暗い歩道上を自転車走行していた依頼者(自転車走行可能の歩道であり、灯火状況や速度などにおいて特に問題なし)が、先を歩く歩行者に追突し、同人を転倒、負傷させたという過失傷害事件である。
本欄において「鵜飼」で検索すると、関連記事が複数出てくるが、その関係である。上記のように運転状況に特段の問題を指摘出来ない依頼者について、いかなる過失構成が主張されるかは、正に事案の帰趨を決するだけの重要性があり、にもかかわらず弁護人の求釈明を放置し、未整理のままに公判入りを強行しようとした鵜飼裁判官との間で忌避申立を何度も(確か三度)繰り返す展開となったことは(3年以上も前だが)記憶に新しい。
依頼者が70代と、交通工学の先行研究において高齢者に該当したことから、高齢者の視力の特徴や、また、夜間の視力の特徴をめぐり、貴重な学びを得た事件であるが、無罪が確定したら本欄で解説を加えるとして、今回は客観的な報告に留める。
判決は、検察官の主張する過失構成においても、「6メートル手前で歩行者を発見することが出来、そこで急制動すると、36センチ手前で止まれる」という構造であったため、少しでも条件設定が異なると結果回避可能性に重大な疑問が生じることを出発点にし、その「6メートル手前」を導き出した実験が、高齢者の視力の特徴を十分考慮せず、動体視力ではなく静止視力を用いているなど、証明力に不十分であることを指摘。
それにより最早「6メートル手前」が崩れるが、更に、停止距離を導くための反応速度についても統計的平均値に拠ることの妥当性に疑義を提示し(先行研究において、相対的に最多数(30%)の被験者群が平均以下に固まっていることが報告されている)、また、ハンドル操作による回避可能性を論証した検察官の実験についても証明力が不十分である等として、無罪を導いた。
鵜飼裁判官が異動してからは、1~2か月に1度の打合せ期日を挟みつつ、検察官の大がかりな補充捜査に二度の停滞期を挟みつつも、そこから2年で判決に辿り着いた。この経過にも言いたいことはあるが、他日を期したい。
(弁護士 金岡)

















