【1】
前回(2/3)からの続きで、国が、“一般的な検察官であれば平間文啓検察官と同じことをする”と主張していたことを具体的に紹介する。
被告第4準備書面(2025年12月12日付け、作成名義は、小林萌子、辻守、池平智美、岡部直樹、伊藤彰浩、遠山麻利子、加藤悠の各指定代理人の連名である)では、次のように主張されている。
当初訴因と隠されたLINE履歴との整合性について、「公訴事実自体について訴因変更を要しないことを前提とした訴訟追行は、むしろ一般的な検察官の判断として合理性を肯定することができる」(3頁)。
確定した地裁判決が、「法の予定する一般的な検察官」であれば訴因変更を請求することが期待されていたとして、そうしなかったことを国賠法上、違法と評価したことは、既報の通りである。
論告(検察側証人S証言にかかる物語の信用性)と隠されたLINE履歴との整合性について、「平間検察官が本件LINE送受信履歴が検察官の主張と矛盾しないものと捉えて本件論告を行うことに合理性がある」(前掲準備書面6頁)。
確定した地裁判決が、「関係者証言と矛盾する証拠が出てきた」との前提で、「法の予定する一般的な検察官」であれば論告を取り止めることが期待されていたとして、そうしなかったことを国賠法上、違法と評価したことは、既報の通りである。
このように国は、一般的な検察官は、みな、平間文啓検察官と同様に、本件LINE履歴が、当初訴因とも矛盾しないし、論告とも矛盾しないと判断する、と主張したのである。
【2】
上記が、敗訴を免れるために無理があると分かりながら提出された主張だとすれば、裁判所に対し「一般的な検察官」はこういうものですよという、嘘を吹き込んだわけだから、またしても、裁判所を欺こうとしたことになるだろう。前掲小林萌子ら指定代理人団は検察官等で構成されているから、それはそれで深刻である。
他方、本気で“一般的な検察官であれば平間文啓検察官と同じことをする”と主張していたとなると、それはもう、本当に深刻であり、全国の一般的な検察官全員を、平間文啓検察官と同様の最高検監察指導部の指導に服させる必要がある。そうでなければ、今後も平間文啓検察官と同じく、一般的な検察官は皆、本件LINE履歴ほどの(訴因維持や論告自体を国賠法上、違法ならしめる)客観証拠であっても、証拠隠しをし続け、虚偽の訴因、虚偽の論告で裁判所を欺こうとし続けるだろうからである。
【3】
上記がどちらであれ、碌でもない事態であることだけは確かである。
検察官に対し、「本件LINE履歴を開示すべきか」という裁量判断を委ねる限り、その行き着く先は、不利な証拠は隠し、裁判所を欺こうとし続ける事態であることは変わらない。
本件LINE履歴のような分かりやすい矛盾証拠ですら、国賠訴訟の最後の最後まで、一般的な検察官であれば矛盾を感じないと開き直ったという、この事実は動かぬ事実であるが、この動かぬ事実を前提とすると、もう、検察官に証拠開示の裁量判断を委ねることは出来ない、と結論する他ないだろう。
悪気が無いとすれば(おそらく悪気が無いというのは虚偽主張だが)、本気で、本件LINE履歴が矛盾証拠だと分からない一般的な検察官に、適正な証拠開示など、土台、不可能である。
【4】
現在、再審手続の刑訴法改正がほぼ決着したようだが、報道によれば、検察官が証拠開示対応を「事案に応じ、適切に行う」ことが附則に盛り込まれて、それにより、寧ろ証拠開示の範囲を狭めるだろう法の改悪が確定的な模様である。
正気を疑う。
本件LINE履歴すら、問題視できない一般的な検察官は、証拠開示対応を「事案に応じ、適切に行う」能力などない。
数多の国会議員は、不適切な証拠開示対応が致命的となった数々の冤罪事件に学ぼうともしていないようである。
【5】
平間国賠を通しての結論は、ありふれたものである。
警察段階から証拠の収集過程を確実に記録させ(ドイツの仕組みを参照するべき、ということについて、https://www.kanaoka-law.com/archives/1791)、裁量の余地のない全面証拠開示を義務付ける。それしかない。
(3/3・完)
(弁護士 金岡)

















