本年8月の愛知刑事弁護塾定例会では、松本浩幸弁護士をお招きして、同弁護士が取り組んだ反対尋問事例を題材とした研修を実施した。
松本弁護士は、言わずと知れた「刑事弁護リーダーズ」の一角であり、十数年の弁護士生活の中で9件(本日現在)の無罪判決を獲得している辣腕である。

研修では、緻密なケースセオリーの検討、構築と、その立証に必要な事実群の獲得に一切の妥協をしない(脇道に逸れることもしない)姿勢が示され、高い水準の理解に裏打ちされた実践が披露された。高い水準の理解に裏打ちされた実践は見ていて気持ちの良いものであり、各地の反対尋問研修でもお勧めできそうな、良い内容であった。

印象的だった一つは、年少者(小中学生)に対する有効な反対尋問技術が未確立、未共有であるという指摘であり、心理特性や供述特性の理解も含め、今後、隣接諸科学の知見も交え、取り組まれるべき課題であると思われた。
また、もう一点、そのような年少者がビデオリンク尋問に臨む時の付添人の選定に意を用いるべきことが報告されたのも興味深かった。長崎地裁の事案で、検察官が推薦した付添人(カウンセラー職で、弁護人は反対した)が、証人の証言後、「起訴前の司法面接の方が、公判証言より相対的に特信性がある」ことを疎明するための意見書作成に応じ、証言時の観察内容に言及してくると言う、考えがたい事態が生じた(裁判所も流石に証拠排除した由)とのことで、このような付添人適格を巡る問題は、経験した者には分かるが、経験しなければ調べようもなく、不当な事態に甘んじかねない危険性がある。

定例会で外部講師を招く場合、一方通行の講義になる場合と、双方向的な事例検討会になる場合があるが、今回は後者であり、後者の方がなんというか、受講者の食いつきも良かったように感じられた。
今後も各地の優れた実践に学びたいものである。

(弁護士 金岡)