証拠意見の書き方は、おそらく余り教わらない。
極く偶に研修で一言二言、触れることがあるが、我流のものを披露するばかりである。
公判手続の中では基本に属するし、時に控訴審での争い方にまで影響を及ぼすので、突き詰めるべき技術の一つであると思う。

さて、近時、法廷でゴタゴタしたのは、乙号証に関する証拠意見である。
(捜査段階は私ではなかったので、乙号証がある事案であった)

乙1の身上調書について、証拠意見を「不同意、不必要」と書いた。
不同意というと伝聞例外を主張してくる検察官が時々いるので(かの神田大助裁判長は自由な証明で採用するという暴挙をなしたが(本欄2020年1月15日)そういう検察官は流石にまだみたことがない)、「どっちみち要らないと思いますよ」と予め方針を明示して不毛な遣り取りをさけようという発想である。
これに対し、裁判長はお気に召さなかったようで、とにかく「不同意かどうかだけをいえ」とこうである。確かに、不同意⇒検察官が伝聞例外⇒必要性の議論、という段取りを踏むのは理屈だが、「不同意というのは何を争う趣旨なんだ」みたいに段取りをすっ飛ばす裁判官が多発するし、大切な証拠意見が口頭でぐちゃぐちゃするのも嫌なので、色々と付け足すようになっていった歴史を振り返る時、余り合理性のある拘りとも思えない。

不利益事実の承認を含む供述録取書について、「不同意、任意性を争う」と書いた。裁判長はやはり「不同意かどうかだけ」に拘りを見せてゴタついた。
検察官が322条を主張しないなら「任意性を争うかどうか」は余計なことに違いないが(なので、変に先取りせずに「不同意」とだけ書いていた時代もある・・不同意意見に対し「任意性を争う趣旨か」と聞いてくる裁判官に対しては、「322条の請求もないのに何を仰るやら」と白い目で見る対応をしていた)、先にも述べたとおり書面で手続的に明確にしておきたい場合、必要に応じて書いて悪いはずもなかろうと最近は考えている。

戸籍は、「不必要であり、異議がある(証拠能力は争わない)」とした。
究極のところ伝聞例外は争えないし(例えば323条の公務員の作成した書面など)、有害でもないが、しかし要らないと思う場合にどういう風に意見を書くか。
「同意するが不必要」なのか「不同意、不必要」なのか・・。どれが正解かと決めつける気はないが、「同意」はできないだろう。けれども、反対尋問したいわけではないから「不同意」というわけでもない。折衷的に、上記のように書いたが、裁判長には不同意という意味なのかが分かりかねたらしい。まあそう言われればそうかもしれないので難しいものである。
これに関連しては、違法収集証拠を主張する場合も、同じような問題を感じる時がある。「同意、但し違法収集証拠として排除を求める」のも変であり、かといって(例えば押収手続書類そのもののように)反対尋問したいわけではないなら「不同意」と書くのもなぁとなり、「違法収集証拠であるから異議がある(伝聞性は争わない)」みたいに書くことが多いが、どうだろうか。やはり裁判所から見れば「不同意かどうかいえ」となるのだろうか。

ともあれ、証拠の内容を見ていない裁判所より、弁護人の方が、展開予測出来る材料は多い(322条の請求があると思い込んで「任意性を争う」と付け足したら、あっさり撤回されることもあるが、それはそれ、であるし、検察官も弁護人の方針を踏まえて攻撃方法を決定するのだろうから、面倒さを避けて撤回してくるなら、当事者間では噛み合っていると理解出来よう)。
また、書面は明確で紛れの余地がない。
そのように考えて、不同意の趣旨や、必要性、関連性あたりの異議理由も、適宜、積極的に書き込むことは、有り得て良いだろうと考える。
副次的には、そのように展開予測を伴う書面を作成する過程では、必然、展開予測を行い、法廷での遣り取りを想定して種々の準備(極端な話、忌避を準備することもあるかも知れないし、少なくとも必要な根拠法条を確認しておくような準備にも繋がる)を行うことになるから、結果的に法廷は充実したものになる。

「証拠意見の書き方」研修は大仰であるが、証拠意見一つをとっても、先々の展開予測なしには法廷を担えないし、展開予測をしたからには適宜の工夫を凝らした証拠意見を述べれば良いだろう。
自分の枠にはめようと拘る裁判官に遭遇したらお気の毒様であるが、事前準備が出来ていれば何なりと応戦出来るはずだと思う。
証拠意見、証拠調べ請求書、弁論。おまけで身元保証書。紋切り型の書式では不十分であることは確かだ。

(弁護士 金岡)