保釈許可決定に対する検察官準抗告を棄却した名古屋地決2022年12月2日は、「・・・そうすると、概ね同旨の理由を掲記し、・・・等の条件を付して被告人の保釈を許可した原裁判の判断は是認することができる」「検察官の主張(なお、その多くは原裁判において考慮済みであると認められる)を踏まえても、上記の判断は左右されない」と説示した。
この決定から読み取れるように、原決定は「理由を掲記」した決定書を作成した。その結果、事後審である準抗告審から見て、その判断過程において準抗告理由である検察官の主張は「多くは考慮済み」と扱われて、裁量逸脱は無いと是認されたのである。
実に分かりやすい構図である。
本欄本年8月15日や、「保釈90」において、稀に決定理由付きの保釈許可決定があることを報告したが、本件の原決定もそれに類するものである(概ね15行にわたる決定理由が付されていた)。
第1回前であるから判例法理(最決2014年11月18日)の係属審裁量は直接には妥当しないと思われるが、それでも事後審制の下では一定の裁量幅があり、判断過程統制に馴染むのであろう。そうすると、具体的な決定理由が示されている限り、準抗告審は当該決定理由の判断過程を審査することになるのが原則であると解される。
請求審が自らの決定の判断過程を、自信を持って評価に差し出す上で、このような決定理由の付記は必要であるし、一方的な権力関係下に不利益処分の決定理由が明示されるべきは全法領域に共通の要請(恣意の抑制及び不服申立の便宜)である。結論がどちらであれ、このような流れはもとより望ましいものである。
なお、原裁判所が意見書を添える手続(法423条2項)は、通常抗告、即時抗告、及び特別抗告には適用ないし準用されるが、準抗告手続だけは除外されている。この区別に合理性があるとは全く思われず(ひょっとして事実上の運用でもそういったことがなかろうかと二度三度、素知らぬ顔で謄写請求を出しても、ないと言われてばかりである)、準抗告手続の恣意の抑制及び不服申立の便宜のためにも、法改正が望ましいのでは無かろうか。
(弁護士 金岡)