防犯カメラデータやスマホデータなどの複製を検察庁から得るには、「4条件」を承諾する旨の誓約書を差し出すか、少なくとも「4条件に異議がなければ謄写されたい」という一方的通知を甘受しなければならない。例えば1事件1枚限定、複製禁止などという条件が付されるために弁護人が3名いても弁護人1名しか保有できない等という馬鹿馬鹿しい事態になり、整理手続であれば裁定請求に発展する場合も少なからずある。
本欄2022年12月26日「余りにも稚拙な法廷」のように、弁護人がデジタルデータから切り出して証拠を作ろうとすると「ダメです」等という、馬鹿馬鹿しいを超えた事態が生まれるのも、この4条件故である。

が、事態は更に馬鹿馬鹿しい方向へ迷走している。
この程、「接写による謄写4条件」(仮称)なるものを目にしたが、つまりこれは、紙媒体の記録をデジカメ接写(デジカメとは限らないが)するという手法(謄写業者を用いないので肉体労働を除けばタダであること、デジタル保管するなら一々紙媒体で謄写する義理はない等々)に対しても、「4条件」をつけるというものである。
その1は「インターネットに直接接続可能なスマートフォン、タブレット等の撮影機能を使用しての謄写(撮影)はしない。」、その2は「謄写に係るデジタルカメラ等記録媒体の電子データ (デジタルカメラやスキャナ等を使用して電磁的記録媒体に保存された電子データも含む。以下同じ。)を複写して、更に別の電磁的記録媒体を作成したり、又は、前記記録媒体からパーソナルコンピュータのハードディスクに複写して記録するなど一切の電子データによる複写物は作成しない。」である。

「インターネットに直接接続可能な」撮影機器を使えないとなると、撮影機器自体が非常に限定される。典型的にはデジカメくらいしかない。しかし条件2で、これをパソコン等にコピーできないとなっているので、デジカメ接写したものを取り出せない。
強いて言えば、デジカメ接写の際に保存場所を内蔵HDDではなくSDカード等に指定しておけば、SDカードを取り出してパソコンに差し込み、条件2違反を免れることは出来るだろう・・・と言いたいところだが、ここで条件3「謄写に係るデジタルカメラ等記録媒体をインターネット等により外部に接続したパーソナルコンピュータ等に接続するなどインターネット接続可能な環境の下に置かない。」が登場する。ネット接続を切れ、というのに加えて「ネット接続可能な環境の下に置かない」となると、ネット接続を切ったところで「接続可能」に違いはないのだろうから、結局パソコンでの作業はありとあらゆるところで不可なのか???
まあ考えるだけ馬鹿馬鹿しいので最早「どっちでもいい」のではあるが、どうしようもなく馬鹿馬鹿しい代物である。
で、結論、これ守るのは不可能でしょ、ということになる(因みに、うちは旧態依然たる紙主義なので新4条件に違反することは多分ない)。

さて、以前にも本欄で書いたような気もするが、今時の複合機には(検察庁からの)ファクスを自動的にPDFファイルにしてネット経由で送信してくれる機能がある。検察庁から証拠がファクス送付されることはままあるが、その場合、こちらに悪気はないのだが、その瞬間に当該証拠はデジタル化され、複製され、ネット空間を飛んでいることになる。
勿論、これはうちのせいではないが、このようにしてデジタル複製がネット空間を飛び交っている現実がある時に「新4条件」とかいって喜んでいるのは、いかにも頭が悪い役所が考えそうなことだとしか思わない。実害がどうかよりも形式的に縛っておけば、問題が起きた時には責任を弁護人に押しつけられるさ、くらいの発想なのだろう。
余計なことを言うなと言われるかも知れないが、紙媒体で謄写した上で、PDF化して証拠を保管している弁護士は多かろう。現時点で、紙媒体で謄写したもののデータ化を禁止するような謄写条件は付されていないが、「新4条件」の趣旨からすれば、紙媒体で謄写したものについても全く同様の条件を付さなければ平仄は合うまい。結局、実害どうのこうのより形式的に縛りたいだけの、非常に頭の悪い役所仕事としか言えない。

こんなくだらないことで仕事を邪魔されるというのは、実に馬鹿馬鹿しいことである。

(弁護士 金岡)