本欄で一度、報告したことがあるが、供述調書に署名押印する前に弁護人が内容を確認するという扱いが稀にある。
先日、またそういう経験をした。

愛知県内のH警察署(と書くと複数あるので特定は避けられる)であるが、被疑者が2名に弁護人が2名、それぞれ出頭に同行して取調室前にて待機し、黙秘はせずに一定供述に応じるという方針である。
で、片方は進み具合が早く、あとは署名押印するだけの供述調書が弁護人に開示され、警察官は退出して被疑者と2名で打合せ、署名押印しようという結論になる。かたやの被疑者は、進み具合が少し遅く、供述調書の形になる前の下書きが開示され、同じく打ち合わせて、署名押印しようという結論に。
事案によっては弁護人から作成して提出する場合もあるわけで、そういう遣り方もあるというわけだ。

取調室内に入らない、即時の助言ができないという限界はあるが、少なくとも本人が困ったら外に出てくれば良いわけで、それに加えて何に署名押印しようというのか確実に把握できることから、一選択肢としては採り得る手法であろう。
なお、幾ら調書の記載に特に問題がなくても、客観矛盾や記憶違いなどが出てくることは不可避であり、そのような危険性を排除できるかは、弁護人が慎重に判断しなければならないことは勿論である。

(弁護士 金岡)